麻酔の効果をよくするために麻酔の量を増やせばいいものではありません。
麻酔が効かないからといって量を気にせず使っていいわけではありません。患者さんが局所麻酔などで痛がっている場合どんどん痛み止めであるキシロカインを追加していいわけではないのです。キシロカインの量が過剰でショックが起きることがあるからです。
これをキシロカインショックと呼ばれています。
日本麻酔科学会推奨のキシロカイン限度量(極量)
各麻酔方法によりリドカイン塩酸塩の最大容量は違います。
- 硬膜外麻酔,伝達麻酔,浸潤麻酔には,リドカイン塩酸塩1回200mg以下
- 脊髄くも膜下麻酔には 1回100mg以下
- 抗生物質製剤を筋注する場合の疼痛緩和のための溶解液には15mg以下
- 外用液には 200mg以下
- ビスカスには 1回300mg以下
- 外用ゼリー(キシロカインゼリー)は尿道麻酔で男性には300mg以下、女性には100mg以下
キシロカインの限度量
麻酔薬の注入した量ではなく、その麻酔薬に含まれている薬の薬液量に注意する必要があります。
Eなしキシロカイン
基本的には体重1kg当たり7mgが限度とされています。
体重50kgであれば350mgですね。
日本麻酔科学会推奨は、200mgまでとしています。
(麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版)
引用元
・例えば小さい傷であれば、1%キシロカインを5ml使うことが多いです。
その場合ですと、1%キシロカイン5mlであれば50mgのキシロカイン有効成分が含まれています。
そのため、最大7本の1%キシロカインを5ml使うことができるということになります。
(もし、2%キシロカイン5mlであれば100mgのキシロカイン有効成分が含まれています。)
本来は1%キシロカインが5mlで十分ですので通常であれば気にしなくていいのですが、ショックで最悪死に至ることもあるため麻酔の量を気にせず使うことはしてはいけません。
E入りキシロカイン
エピネフリン添加である1%Eキシロカインは、通常の2.5倍使えるので基本的は体重1kg当たり17.5mgが限度となります。
体重50kgであれば875mgですね。
日本麻酔科学会推奨は、200mgまでとしています。
・また、よくある大腿部頸部骨折の際の手術には1%Eキシロカインを20ml使っていました。
1%Eキシロカインを20mlであれば200mgのキシロカイン有効成分が含まれています。
つまり、1%Eキシロカインを20mlを4本と少し使える計算になります。追加で使うことあったり、全身麻酔でキシロカイン(リドカイン)を使う麻酔もあるため注意が必要です。たぶん、おそらくそこまでキシロカインを使うことはないように思いますが、むやみやたりに麻酔が多いければいいわけではない理由がわかったかと思います。
麻酔の量と追加についての注意点
・もっとも怖いのが局所麻酔薬中毒ですので十分に注意する必要があります。もし局所麻酔薬中毒が生じたときは血圧低下に気づくことや気道確保を含め、適切な対応が必要になります。
・麻酔される患者は麻酔の効果があっても心理的要因で痛みを感じることがあり、「痛い、痛い」と訴えることがあります。そのため、局所麻酔の時は深呼吸を促したり、冷静にさせることにつとめることが必要な場合があります。
・麻酔は完全に感覚がなくなるものではありません。触れられている感覚はあります。そのため「触られている感じありますが、痛みは痛み止めの効果でなくなっているはずです。」などと声がけするとよいでしょう。
・このキシロカインの量に敏感にならなければいけない場合はやはり手術の際などですので注意が必要です。
(麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版 引用:http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/publication4-5_20161125.pdf#search=%27%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3+%E6%A5%B5%E9%87%8F+%E8%A8%88%E7%AE%97%27)