救急救命士の特定行為
救急救命士が特定行為をするためには、その内容によってそれぞれ研修を受けることで実際にできるようになります。
救急救命士は法律で「診療の補助」を行うことと明記されており、看護師と同じで、医療行為はできなくあくまで医師の指示のもとでおこなうようになっています。
挿管も医師の指示のもと行い医師との連携が必要になっています。
- 医療器具(エアウェイ)を用いた気道確保
- 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液
- アドレナリンなどの薬剤投与
- 気管挿管
- 血糖測定並びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与
- 心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液
救急救命士法で特定行為で明記されています。
4と5については平成26年の法改正により特定行為が拡大された形で実施できるようになったものです。
静脈路確保のための輸液とリンゲル液を用いた静脈路確保及び輸液についての違い
静脈路確保のための輸液
これから薬物投与のための静脈路を確保が必要と予想される場合に、静脈路を確保することです。そのためルート確保時点で輸液で体内に足りないものを補うものではないです。輸液の速度は確保した静脈が血で固まらない程度の速さでゆっくりした点滴を行います。
リンゲル液を用いた静脈路確保及び輸液
出血、ストレス、ショック状態またはクラッシュ症候群に対しての輸液です。循環容量の確保又は尿量の維持のために、輸液をします。そのため、それなりに持続的に量と速さが求められ使う薬剤も重要なものなため「何かあったときのためのルート確保」とは違います。
リンゲル液とは?
生食は血液と同じ浸透圧で体内に水分を与えるには負担が少ないです。そして生食は血管内に投与するとその大半は血管内に留まる性質があります。しかし、生理食塩水だけでは電解質バランスが崩れてしまうため、KとCaを生理食塩水に加えた輸液がリンゲル液です。
細胞外液である血漿の電解質成分に近いものが、リンゲル液と呼ばれるものです。
手術の当日(術前)は絶飲食のため体内は脱水状態です。さらに、術中出血やストレス、炎症で血管透過性の亢進され、細胞外液の不足状態になったりします。そして血糖コントロールが不安定になるため糖は必要ありません。そのため、手術前やショック時などはこのリンゲル液が最適です。
気管挿管の方法
- 喉頭鏡を用いた直視下の経口挿管に限定
- 挿入に要する時間は1回 30 秒以内、挿入試行回数は原則1回(最大 2 回まで)
- 挿入は安全に静かに行い、強い抵抗のある場合は中止
- 挿入の深さは気管チューブのカフが声帯を2cm超える位置(成人男性で門歯21cm~24cm、女性で門歯19cm~22cmを目安)
- 気管チューブカフ(低圧カフを使用)通常は10mlでフ漏れがなくなる量
救急救命士の特定行為の問題
特定行為は、救急救命士の医療行為について研修を受けることにより行える医療行為の範囲の拡大できることになっています。
しかし、問題もあります。
- 一刻を争う重体の傷病者に薬剤が十分に投与できない
- 呼吸停止の場合に気管の挿入が十分にできない
といったことがあるのです。
このため特定行為の定めによって患者の死亡率が上がっているのではないかという議論があるのです。しかし、助かる命もあるためどちらともいえないです。
逆に現在救急救命士の特定行為の追加を検討しているもの
血糖値の測定
心肺停止前の静脈路確保
低血糖発作時のブドウ糖の投与
重症喘息発作時のβ吸入薬の使用
などです。
アメリカの救急救命士(バラメディック)は日本と比べ行えることにレベルの差があると言われております。
日本の医療はレベルが高いことは確かなので今後ぜひ期待したいものです。
アメリカは救急救命士はEMTとバラメディックの2つ!
アメリカでは日本でいう救急救命士「EMT」と
準医師にも値するとよばれる救急救命士の「バラメディック」
の2つに別れています。
パラメディックとは
パラメディックとは、高度な救命・緊急医療処置が可能である救急隊員です。
EMTは気管挿管や薬剤投与(アドレナリン含む)、緊張時やCPA前の静脈路確保など日本の救急救命士と行える行為はほぼ変わりありません。
しかし、パラメディックの資格は、救急救命士のように更新の必要はないですが、2年ごとの資格更新が必要となり更新がなければ資格はないです。
資格更新の内容は、レベルが高く気管内挿管や静脈路確保などについて一定の実施回数が定められており、その回数に満たない者は、個人の時間を利用して病院実習を行い、回数を補う必要があります。さらに、座学講習も年間20~30時間必要です。さらに更新試験もあり合格(80点以上が合格ライン)しなければ、資格を失います。
パラメディックと救急救命士の教育力リキュラム時間の比較
パラメディック養成所カリキュラム
- 座 学 400 時間
- 病院実習 200 時間
- 現場実習 600 時間
- 総計 1200 時間
救急救命士養成課程(消防)
- 座 学 535 時間
- 臨床実習 300 時間
- 総計 835 時間
アメリカの救急隊員の資格
EMT-B(Basic)
一般的な救急処置ができる救急隊員のことであり、普段消防車に乗っている
隊員は全員この資格を持っている。日本の救急Ⅰ課程もしくは救急標準課程に
相当する。
EMT-D(Defibrillation)
EMT-Dは電気的除細動を意味しており、EMT-B取得者に対し電気的
除細動の適応や処置を教育し、心配停止患者の救命率向上を狙ったもの。
EMT-I(Intermediate)
EMT-Dが行える処置に加え、気道確保のための気管挿管や静脈路確保、
電気的除細動などを行うことができ、日本の救急救命士に相当するもの。
EMT-P(Paramedic)
EMT-Iが行える処置に加え、医学的判断に基づき薬剤投与が可能となる。