聴診器とは、心臓・肺・腸管の音を聴くための医療器具です。
聴診器を使って音を聴く診察を「聴診」といいます。
看護師には、なくてはないアイテムですね。

どんな聴診器がおすすめか?

性能の高い聴診器がおすすめです。性能は重要で安くても聞こえる音も多いですが、高い聴診器はやはり性能がよく音の聞き分けがしっかりできます。聴診器の性能が高いほど、患者の体の音を聴きやすくしっかり判断できるようになります。
医師はもちろんいいものを使いますが、看護師もいいものを持っておくのがおすすめです。

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選び方

  • ダブルチューブではなく、シングルチューブのタイプを選びましょう。
  • 理由:ゴム管部分が2又に分かれているため、チューブ同士が頻繁に擦れるため、その音で心音が聴き取りづらくなります。
  • チューブは分厚く、短く、比較的硬めが音が聴きやすいです。
  • 聴診器を頻繁に首に巻く場合は、長めのチューブがかけやすいです。
  • ダイヤフラム面も膜の部分を軽く叩いてみて、音漏れがないことを確認します。叩いた際に、イヤーチップを通して音が聞こえるかどうかを確かめます。音が全く聞こえない場合は、チューブの途中で音が漏れている可能性があります。
  • 耳管部を調節します。耳管部を前向きにして、イヤーチップがしっかりと耳にフィットするように合わせます。周囲の雑音が耳に入らないことを確認します。しっかり調節しないと、音が聴きとりづらくなります。
  • 耳管部は必ず前向きで使用します。
  • 自分からみて「ハの字」になるように耳にかけます。
  • 聴診器のイヤーチップは、取り外しが可能で古くなったら交換します。耳に上手くフィットしない場合は、耳の穴にあったものに交換します。各種イヤーチップはamazonでも購入できます。メーカーが違くても、ほとんどの聴診器で同じく使えることがほとんどです。
  • 最新の高度な聴診器は、耳管部の位置を前にずらすことができるためよりフィットできるような聴診器もあります。
  • チェストピース(集音盤)を大事な部分です。聴診器に取り付けるチェストピースには実は様々な種類があります。使用目的に合わせて選びます。また、小児と成人の聴診器のチェストピースでは大きさが違います。聴診器ごと小児と成人で使いわけることが多いです。

聴診器を使った聴診の方法・コツ

静かな場所がよい

聴診を行う際は、静かな場所がよいです。緊急の場合が周りの音がすることもあり聴きにくいこともありまうので普段から聴診する場合は聴診器の音に集中ししっかり聞き分けができるようになることも必要です。

聴診の体勢

患者に適切な体勢になってもらいます。
患者の体勢によって、心臓、肺、腸管の音は変わりますので体勢もしっかりとります。

  • 心臓の音や腹部の音を聴く場合は、患者を仰向けにする必要があります。
  • 肺の音を聴く場合は、座って背筋を伸ばしてもらう必要があります。

ダイヤフラム面とベル面ってどっちがどっち?

チェストピースには、ダイヤフラム面とベル面があります。ダイヤフラム面(振動板の付いた平らな面)は、主に中域から高域の音を聴く際に使用します。反対側のベル面(ベルの形をした円形部分)は、主に低域の音を聴く際に使用します。

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聴診の仕方

患者には手術衣を着てもらうか、または服をめくって肌を露出してもらいます。聴診器を直接肌に当て、衣類の擦れないようにします。男性で胸毛が生えていると、擦れてしまい音が入るので、聴診器を胸に押し当てたまま動かさないようにしてしっかり聞こえるまで聴きます。

聴診器は冷たい

冬などは特に聴診器は冷たいと患者は感じます。
聴診器を手で温めてるか。服の袖で擦って温めるかします。

心臓の音を聴く

①ダイヤフラム面を心臓の上に当てます。
左上胸部、第4肋骨と第6肋骨の間(乳房のほぼ真下)にダイヤフラム面を置きます。指同士の擦れる音が入らないように、人差し指と中指でベル面を挟み、慎重に、かつ適度な力で聴診器を患者の胸に押し当てましょう。

②そのまま1分間心臓の音を聴きます。患者にはリラックスして普段通りに呼吸をしてもらいましょう。

正常な心音を聴き分け

ドックン」という音が聴こえるはずです。心臓の動きには「収縮期」と「拡張期」があります。「ドッ」の音は心臓が収縮する音で、「クン」の音は拡張する音です。

Ⅰ音とⅡ音の聞き分け

Ⅰ音:「ドッ」という音、収縮期に僧房弁と三尖弁が閉じる際の音
Ⅱ音:「クン」という音、拡張期に大動脈弁と肺動脈弁が閉じる際に発生する音です。

1分間に聴こえる心拍を数える

Ⅰ音とⅡ音の聞き分けをしつつ、1分間に聴こえる心拍をカウントします。

平常時の心拍数
  • 10歳以上の子供〜成人:毎分60~100
  • トレーニングを積んだアスリートの場合:毎分40~60
年齢別!0歳未満の子供の平常時の心拍数
  • 生後1か月未満の新生児: 毎分70~190
  • 1~11か月の乳児: 毎分80~160
  • 1~2歳の幼児: 毎分80~130
  • 3~4歳の幼児: 毎分80~120
  • 5~6歳の幼児: 毎分75~115
  • 7~9歳の児童: 毎分70~110

異常な心音を聴き分け

異常な心音を心雑音といいます。
心雑音は、心音の間に聴こえる「シュー」「ザー」などと聴こえる通常では流れない血の流れの音のことです。
・「ドックン」以外の音が聴こえたら、心臓に何らかの異常が発生しているかもしれません。少しでも異常な音が聴こえたり、心音がいつもと違う場合は、医師に診察してもらいます。

・「シュー」という異音は、またはⅠ音とⅡ音の「ドックン」の間に異音があり、「ドッ…シャー…クン」と聴こえる場合は、心雑音である可能性があります。心雑音は、平常時に比べ、急激な速度で血液が心臓弁を通過する際に発生します。心雑音の中には、音がしても問題ないものもあります。しかし、いくつかの心雑音は心臓弁の異常であるため医師に報告できるくらいまでなれるとよいでしょう。

Ⅲ音とⅣ音の聞き分け

1音と2音までは正常ですが、3音そして4音が聴こえることもあります。
・「ドックン」に続きもう1つの音がして、低周波の振動で第3の心音となる音が聞こえる場合は、心室中隔欠損症の疑いがあります。この第3の心音は、Ⅲ音または心室性奔馬律動と呼ばれます。Ⅲ音が聴こえる場合は、患者に詳しい検査を受けるように助言しましょう。

  • Ⅲ音:心不全を疑います。
  • Ⅳ音:心筋症などで心室筋の収縮力が低下し、病的に心房が強く収縮する場合に聴かれます。

心音の減弱がある場合

心音の減弱がある場合は、心タンポナーデ、著しい肥満が考えられます。

聴診を行う際は、今聴いている患者の心音が正常かどうかを的確に判断しましょう。
聞き分けには練習が必要ですので、できないころは聴診をできるだけ行うようにします。

肺の音を聴く

①患者を座ってもらい、普段通りに呼吸をしてもらいます。聴診の最中に呼吸音が聴き取れない場合や、または呼吸音が小さくあまり聞こえなく、音を判断できない場合は、患者にゆっくり深呼吸してもらいます。

肺の音を聴くポイント

  • 肺の音は、ダイヤフラム面を使います。
  • 患者の体の正面と背中から聴診器を当て、肺の上肺葉と下肺葉の音を聴きます。右肺は上・中・下の三肺葉に分けて聴きます。
  • 聴診の際は、聴診器を胸の上部(頸部の下あたり)に当てた後、胸部鎖骨中線に移り、最後に胸の下部に当てます。必ず正面と背中と前と後ろから聴診します。
  • 肺を聴診するポイントは肺の音を比較です。前後両側の前後左右12カ所比較します。

正常な呼吸音の聞き分け

呼吸が正常であれば、空のコップに息を吹き込むような、乾いて澄みきった音です。

正常な呼吸音は2種類

①気管支呼吸音:気管支および、気管支樹の音。比較的高い音です。
②肺胞呼吸音: 肺組織の音。比較的低い音です。

異常な呼吸音

異常な呼吸音である複雑音についてはこの記事を参考にしてください

腹部の音を聴き方

・ダイヤフラム面で聴きます
・へそを中心に、左上、右上、左下、そして右下の順4カ所に分けて聴診します。

正常な腸雑音を聴き分け

聴診器を使わなくても聞こえますよね?ぐるぐるーって!
正常な腸の音は、お腹が鳴るように「グルグル」とした音です。
正常な腸の音とは4カ所すべてで「グルグル」という音が聴こえます。手術後は、なかなか腹部の音を聴こえませんがそれは術後麻酔で腸の動きがとまっていたためなので様子をみて再度聴診します。

異常な腸雑音を聴き分け

腸管を聴診する際に聴こえる音のほとんどは、ただの消化吸収の音であることが多いのですがしっかり聞き分けできるようになりましょう。

腹部の音聞こえない

腸雑音がまったく聴こえない場合は、胃にが閉塞している可能性があります。 もっとも、便秘の可能性もあり、その場合、しばらくすれば腸雑音はひとりでに再開します。しかし、一向に腸雑音が再開しない場合は、腸閉塞の可能性を疑います。
医師に報告します。

5分ほど腸雑音が聴こえず、その後に活発な腸雑音が起こる場合は、腸管破裂または腸管組織の壊死している可能性があります。

高音域で腸雑音が聴こえる場合も、腸管が閉塞を起こしている可能性があります。
処方薬、脊髄麻酔、感染症、外傷、腹部手術、または腸の過膨張によって、腸雑音のテンポが遅くなる場合があります。

速い、または極度に活発な腸雑音(機能亢進性腸雑音)の原因として、クローン病、胃腸出血、食物アレルギー、下痢、感染症、潰瘍性大腸炎などが考えられます。

血管雑音を聴く

血管雑音を聴診することはあまりないかもしれません。
しかし、重要な指標ですのでしっかり聴診できるようにしておきましょう。
聴診の際に心雑音らしき音が聴こえたら、血管雑音も聴きます。
心雑音と血管雑音の音は似ています。

頸動脈

聴診器のダイヤフラム面をいずれかの頸動脈に当てます。頸動脈は、患者の首の前側にあり、喉仏(甲状軟骨)の左右両側にあります
頸動脈の音を聴く際は、聴診器を強く押し当てないようにします。頸動脈を強く圧迫すると、血行が阻害され、患者の意識がはっきりしなくなることがあります。また、左右の頸動脈を同時に圧迫してもいけません。

血管雑音を聴き分け

血管雑音を聴き分けましょう。「シュー」という音が聴こえれば、動脈内が狭くなっています。
次に、腹部大動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈などの音を聴いて血管雑音の有無を確認しましょう。

血圧の測定時の聴診器の使い方

①血圧計のマンシェットを患者の腕に巻きます。袖は、なるべく捲りますが、まくることできつくなったり、まくっても腕が見えない場合はまくらない方がよいです。

②必ずはマンシェットしっかりと巻く必要がありますが、締め付けすぎないように注意しましょう。逆にゆるすぎてもだめです。

③カフの端の真下を通る上腕動脈に、聴診器を当てます。低域の音ではベル面使いますが、使いにづらい場合はダイヤフラム面でもよいです。患者の最大血圧である、「ドンッ」という低音という音を聞き逃さないようにします。動脈をカフで締め付けてるときの音は、コロトコフ音といいます。

*もし上腕動脈がどこかわからない場合は自分でやってみるのもいいです。脈打つところが見つかったら、そこが上腕動脈になります。

④180mmHgまたは患者の最大血圧から30mm高い圧力までカフの圧力を確認しながら圧をあげていきます。

⑤血圧計のデジタル表示または水銀の目盛を見ながら、カフの圧力を確認しながら圧を下げていきます。圧を下げる速さは毎秒3mmHgのペースでカフから空気を抜いていきます。空気を抜きながら、聴診器の音に注意しつつ、血圧計から目を離さないようにして、血圧の下をしっかり測定します。

⑥カフを減圧して取り外します。血圧の数値は忘れないようにすぐメモをとります。
記録したら、カフの空気を抜いて患者の腕から外します。

血圧の書き方

120/68のように、間に”スラッシュ”を入れて記録しましょう。

血圧をもう一度測る場合

もう一度患者の血圧を測定する場合は、2分ほど間隔を空けてから測定します。
患者の血圧が高い場合や、いつもより血圧が高い場合は、測定します。

*最大血圧が120以上、最小血圧が80以上の場合は高血圧ですので医師の報告するか、医師の診察を勧めます。

聴診器のお手入れ

聴診器は頻繁にお手入れすることで長持ちします。
感染症を防ぐためにも、各患者の聴診が終わるたびに汚れを落とすことが望ましいです。アルコール綿や水拭きなどでいいです。

聴診器を使う注意点

長持ちさせるには、使い方や扱い方が重要です。

・聴診器を水に浸したり、極度の熱や寒さに弱いです。
・聴診の際に少しでも異常な音が聴こえたら、必ず医師に報告します。
・聴診器を耳に入れた状態で、チェストピースに向かって話し掛けたり、集音盤を強く叩いてしまうと鼓膜が破れる可能性があります。最悪、耳が聞こえなくなる聴覚障害になります。