化学療法は患者さんにとっても看護師にとっても簡単な治療ではありません。たくさんの観察・注意点の中で、今回は静脈点滴で留置針を使用している場合に限り、刺入部についての観察・注意点を説明します。

1.刺入部位の選択について

患者さんの血管の状態にもよりますが、留置針は可能な限り利き手とは反対の前腕の血管に挿入します。化学療法はレジメンによっては30分など短時間で終わるものもありますが、1時間以上かかることが大半です。点滴中に食事やトイレなどで動いても、できるだけ支障がなく、しっかり固定できる部位を選択することが重要です。治療が短時間であり、患者さんに認知症や意識障害がなく安静を守れる場合に限っては、太い血管である正中静脈を選択することもあります。

2.点滴中の刺入部の観察

化学療法中の刺入部の観察で重要なことは、まず血管外漏出がないかです。抗がん剤には炎症性・壊死性など、血管外漏出した場合に細胞に損傷を与える効果が強いものがあります。輸液ポンプを使用している場合は、薬剤を強制的に送り込んでしまうため、特に血管が細く脆くなっている患者さんは注意が必要です。漏出を防ぐためにも、最低でも15~30分毎に観察します。点滴開始・交換時には逆血の有無を確認し、点滴中は刺入部の発赤・疼痛・腫脹の有無、刺入部からの薬剤漏れの有無、滴下が良好かを確認します。これらは薬剤が指定の時間で点滴でき、化学療法の効果が十分に発揮されるためにも重要な観察であるといえます。異常がある場合はすぐに点滴を中止し、抜針、処置を行います。万が一血管外漏出が確認された場合には医師の指示を仰ぐ必要があります。

3.点滴終了後の観察

点滴が終了したら抜針します。抜針の際はしっかり圧迫し、止血できたことが確認できてから異常がないか確認します。また点滴後数日は、継続して観察が必要です。

刺入部の観察・注意点については以上です。しかしこれらはごく一部であり、血管外漏出を防ぐためには体位や点滴ルートの整理、滴下調整も大切です。また患者さんへの注意点や異常を感じた時の対応などを説明、理解を得ることも重要な看護師の役割です。十分なコミュニケーションをとって安全安楽な看護を提供していきましょう。