採血スピッツの順番と量と色のわけ

なぜ採血スピッツに順番があるのか?

血液を正確に検査するためです。
ナースなら絶対知っておかないといけない知識なのでしっかり覚えておきましょう。

ポイント

順番はシリンジ採血と真空管採血で違います

では、なぜ違いがあるのか?

それは、血液の特徴である凝固と溶血がポイントになってきます。
ではなぜ凝固と溶血がポイントになるかというと凝固や溶血してしまうと血液検査の数値が正確に測定できなくなるので順番が決まっています。

そのため凝固と溶血をなるべくさせないようにしていく必要があります
溶血については下記の記事で詳しく説明しています。

採血で溶血(+)と混濁(1+)になる原因

シリンジ採血でのスピッツを入れる順番

順番の理由は?

シリンジ採血はシリンジでまとめて必要な採血量を採ります。
採血した血液がなるべく凝固しないようにできるだけ凝固しないように防ぎたいので凝固の採血管から血液を入れます。
つまり抗凝固剤(末血、止血、血糖など)が入っているスピッツから分注します。また4〜5回の転倒混和も忘れずに行います。激しく振ると溶血してしまうので緩やかに振ります。
シリンジ採血スピッツの順番と量と色の画像です
シリンジ採血スピッツ(採血管)の血を入れる順番の画像です

順番 採血管の種類 凝固剤
1 凝固・黒 クエン酸ナトリウム
凝固を調べるため血が固まらないうちに一番先にする。血液が凝固するのに不可欠なカルシウムイオンと結合することにより抗凝固作用を示す。
■検査できる項目
・プロトロンビン時間
・APTT (活性化部分トロンボプラスチン時間) 25.5~36.1 秒
・総ビリルビン 0.4~1.5 mg/dL
・フィブリノゲン 186~355 mg/dL D-Bil
・直接ビリルビン 0.0~0.2 mg/dL
・フィブリン・フィブリノゲン分解産物 5.0 未満 µg/mL
・アミラーゼ 44~132 U/L
・Dダイマー 1.0 未満µg/mL
2 赤沈・オレンジ(橙) クエン酸ナトリウム
 こちらも、血液の凝固を調べるので2番目にする。赤沈フィブリノーゲン・Dダイマー凝固と呼ばれる血中の血液が固まる物質を検査し評価できる。
■検査できる項目
・CRP(炎症反応をみる)
3 緑・黄緑 ヘパリン
 ヘパリンは他の抗凝固剤と違いCaイオンと結合しないので電解質、血液pH、染色体を調べることができる
■検査できる項目
電解質、染色体分析に適している。また、心筋梗塞の鑑別につ使われる心筋酵素H-FABPの測定などに主に用いられる。アンモニアの測定電解質、血液pH、染色体分析、リンパ球培養等の検査
4 血算・紫 EDTA
 EDTAは血球数などの血液学的検査に最も適した抗凝固剤。
■検査できる項目
・血液型
・BNP(心臓から分泌される酵素で、心機能を評価できる)、血球の数や貧血の検査など
6 血糖・灰色 フッ化ナトリウム、EDTA-2Na
 血液が凝固するのに不可欠なカルシウムイオンと結合することにより抗凝固作用あり。血液を放置すると糖が分解される。そのため正確な糖について調べるには糖の分解を抑制するフッ化ナトリウムで解糖抑制する。さらに、EDTA-2Naを加えさらに凝固防止をさせる。
■検査できる項目
血糖・HbA1Cの検査
7 その他
8 生化学・赤茶
血清管(プレーン管)
EDTA-2Na
 生化学検査は、血液から血球成分を除いた「血清」が必要です。血清は血液を放置して上澄みを採取すれば良いのです。その凝固時間短縮のために、血清分離剤・凝固促進剤が入っています。
■検査できる項目
・生化学
・血液の一般検査(血球数に測定など)ができるためよく検査される

*血算とは、血球算定検査の略語。
*量についてその病院や施設で使うスピッツ(採血管)によって違いますがその採血管に書いてあることがほとんどです。

真空管採血の場合スピッツを入れる順番

順番の理由は?

まず生化学の採血管からなのですがちゃんと理由があります。

真空管採血はシリンジを使わず採血しながら直接採血管に入れます。
そのため真空管採血では最初の血液は刺入時の組織液が混入するため凝固しやすくなってます。この組織液は血液凝固を促進させるので抗凝固剤の入った凝固の採血管は不向きなのです。
そのため凝固しても問題がない採血管である生化学の採血管に最初にいれる必要があります。生化学は凝固を促進させる物質がはいっている採血管ですので1本目が最適です。

2本目は凝固、3本目以降は凝固しては困るものから順に採血します。また、凝固検査のみ採血する場合、2本採血し2本目で検査します。

真空管採血でスピッツ(採血管)の順番の画像です。

  1. 生化学・血清:赤や茶|血清分離剤・凝固促進剤(凝固促進フィルム)入り
  2. 凝固:黒|クエン酸ナトリウム入り
  3. 赤沈:橙 (だいだい) |クエン酸ナトリウム入り
  4. ヘパリン入り: 黄緑・緑
  5. 血糖 :灰色|フッ化ナトリウム(解糖防止作用もあり)
  6. 血算:紫|EDTA入り
  7. その他

採血の基本

採血スピッツの順番も大切ですが、その他に正確な採血データを測定するために注意すべきことがあります。

駆血帯の巻いている時間

駆血帯で縛っている時間を短くすることが重要
駆血帯で長時間巻いていると締めると血液の流れを止めていつため組織液が混入しやすく、血液の細胞成分が血管に滞っているので、「凝固検査、ヘモグロビン、白血球数」などの検査の値が変化がおきてしまうので注意しましょう。

穿刺直後は血液流出が激しい

穿刺した直後は血液流出にも勢いよく採血できます。しかし、だんだんと採血できる血の勢いは弱まりので採血管への流入にも時間がかかってしまいますね。時間がかかるので、血小板や白血球の凝集が起こりやすく凝固しやすいので抗凝固剤が入っている採血管のデータは正確ではなくなってしまいます。

抗凝固剤が入りの採血管

採血管には抗凝固剤が入っているものといないものがあります
通常、血液はそのまま放置すると約30分ほどで血は固まってしまいます。そのため、抗凝固剤で固まらないようにします。
検査したい項目により、「血液(全血)・血漿・血清」のいずれかを使って検査します。そのため、抗凝固剤はいくつかの種類があります。時間経過でも検査したい値が変化してしまう検査項目や温度によっても変化する検査項目があるため様々な種類の採血管があるわけです。

抗凝固剤が入っている採血スピッツ

・血球数
・血液学的検査
・血糖検査
・凝固系検査
・電解質
・血液pH
・リンパ球培養等の検査
・染色体検査
の採血スピッツは抗凝固剤が入っています。

抗凝固剤が入ってない採血スピッツ

・生化学
・内分泌
・感染症
・自己抗体
・腫瘍マーカー
の採血スピッツは抗凝固剤が入っていません。

購入した私の標準採血法ガイドラインの画像です
*実際に購入した本

決まったものなく各施設によって違うかもしれません。ですが、多くは日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が発行「標準採血法ガイドライン」を参考にするところが多いです。日本の採血のガイドラインです。

採血スピッツの色はほぼ決まっている

スピッツの種類と色はよく使うものは決まっていますので基本をまずは覚えましょう。
「うす紫色、水色、黒、グレー、緑、黄緑、黄色、赤、茶、白」
と10色です。
よく使うのは…
「うす紫色(血算)、黒(凝固)、グレー(血糖)、茶(生化学)」
と4つのスピッツです。

BDの採血管は、*ISO/JISが推奨のカラーコードより採血管の色決められています。

BDの採血管

BDベクトン・ディッキンソン

テルモの採血管の色も決まっています。
テルモの採血管の色
テルモ

*例えば、生化学といえば「赤か茶」であることが多いですが、水色のようなキャップで生化学のスピッツというのもあります。
生化学のスピッツの色の画像です

採血が上手い看護師になる!採血の手順・コツ・痛くない方法・良い血管の見つけ方

採血で溶血(+)と混濁(1+)になる原因


*ISO規格は、ISO(International Organization for Standardization: 国際標準化機構)が作成した国際規格です。

*JISは、Japanese Industrial Standards の略で、日本工業規格です。

*マイクロスピッツという微量採血管がありますが、採血では使用しないことがあります。