イレウス管の適応とその目的

イレウス管の適応

腸閉塞(イレウス)
腸閉塞とは?
腸内容の通過障害が何らかの原因によりおこり、腸液、ガス、糞便などが
腸内腔に充満し、排便や排ガスがなくなり、腹痛、嘔吐、腹部膨満などの症状が起こること。

イレウスとは?

腸閉塞=イレウスです。
口から摂取した飲食物は、食道、胃、小腸、大腸を通って消化・吸収され便となり肛門から排泄されます。しかし、腸に器質性・麻痺性の問題が生じ腸内に便が詰まった状態を腸閉塞(イレウス)と言います。腸内容の通過障害が何らかの原因によりおこり、腸液、ガス、糞便などが腸内腔に充満し、排便や排ガスもなくなります。

イレウス菅とは?

このイレウスの状態のときに挿入するのがイレウス菅なのです。
イレウスの症状は「突然の激しい腹痛と嘔気・嘔吐、腹部膨満感です」。腹痛は「疝痛(せんつう)発作」(強い痛みが起こり、しばらくすると少し和らぎ、これを繰り返す)が起きます。嘔吐は、最初は胃液様や胆汁様で、進行すると便汁様になり便臭を伴うようになります。

イレウス菅をいれる目的

イレウス状態では、腸内に腸液やガスが充満し腸内圧が亢進すると腸管壁の血管が圧迫されて血行障害を起こします。腸管が浮腫となり腸液やガスなどの吸収が阻害され、さらには腸内細菌が異常増殖しそれにより毒素が産生され、血中に移行することで敗血症を起こし命の危険性が高い状態となります。まず下部内視鏡で診断され軽度の場合は内視鏡で解除できます。しかし、イレウス状態は腸が浮腫しており内視鏡で損傷リスクが高いので、悪化している場合、鼻からイレウス管を挿入して治療します。口側(閉塞部から患者の口方向)の腸液や食べ物を吸引して腸管内の減圧をすることが目的です。

イレウス管 正常な排液の色とその量

排液の色

イレウス管からの排液の色は、「黒緑色、緑色、茶色、黄土色」などが正常です。
最も多いのは黒緑色です。胆汁が多いと黒緑色~やや黒褐色の排液の色をしている事があります。

排液の性状

排液の性状は、小腸上部にイレウス管がある場合は、胆汁様や水様便様が多いです。また、小腸下部や大腸に閉塞が起きている場合には、便臭を伴う黄土色の便汁様のものになります。ここで注意する排液の色は、褐色や鮮血色です。その場合は、イレウス管の吸引や腸壁へ当たり粘膜損傷を起こしているため、すぐにドクターに報告してください。

排液の1日の排液量

排液の1日の排液量は、イレウス管が膨張部にある場合は、500~1000ml/日前後です。イレウス管が、狭窄部を超えると100~300ml/日前後とされています。
*経肛門イレウス管の場合は、臥位から離床時の体動によって吸引圧とは別に大量にボトル内回収できる場合があるので、夜勤時の朝のラウンドの際には注意して観察しボトル交換をしましょう。また、ボトル交換時には機械を停止してから、排出の管にクランプを使用してボトルを外すようにしましょう。

イレウスチューブ挿入術とその方法

内視鏡下で経鼻より挿入する場合もある

チューブの種類

①経鼻用イレウスチューブ

経肛門タイプのものより長く、口から近い小腸や上行結腸での閉塞の場合は経鼻
タイプのものが有効である。
例:経鼻挿入型 Argyle™スーパー デニス™ チューブ  日本コヴィデン
z24040101

②経肛門用イレウスチューブ

経鼻タイプのものより短く、肛門に近い直腸やS状結腸の閉塞では有効。
例:経肛門挿入型 Argyle™デニス™ コロレクタル チューブ 日本コヴィデン
z24040201

イレウスチューブ挿入位置と経路

·経鼻的に挿入,肛門に近い結腸に狭窄がある場合(大腸がんなど)では経肛門的
挿入

固定方法

①経鼻では鼻翼同側頬部に固定する
②経肛門的の場合は,狭窄部口側でバルンを膨らませて抜けないように固定する

予想される合併症

①経鼻的:誤插入(気道),鼻出血,咽頭違和感,鼻翼濱瘍,副鼻腔炎,中耳炎,
誤嚥,誤嚥性肺炎

②経肛門的:消化管穿孔,出血

イレウスチューブの挿入方法

①経鼻からの挿入

・手顧や目的をよく患者に説明し,声をかけながら実施する,
1、嘔気の軽減·頻回の嘔吐を抑制するために留置が必要である,
2、留置時の苦痛軽減目的でチューブに潤滑剤をぬる,
3、鼻腔から咽頭に抜けるまで疼痛を伴うことがあるが、咽頭をぬければ嚥下
運動によりチューブは胃内に入っていきやすい
4、チューブ進行の方向を変えるために体位変換が何度か必要になる。
5、時間がかかることがある(30~40分以上)

・左右どちらの鼻腔から排入するかは,決まりはない。
挿入時,抵抗があれば無理をせず,反対側の鼻腔に変更する。

・臥位でX線透祝下に行う,幽門,十二指腸を通過させるにはX線透視をすることがよい。内視鏡下に幽門輪を通過させることもみる
・留置時の苦痛軽減の目的で潤滑剤を用いる。処置に時間がかかる場合があり、
その場合は潤滑剤を追加する

·陽管の全道で進むように先端に「おもり」がついているため,ほかの経鼻チュービよりも挿入時の苦痛が大きいと理解する
・チューブを鼻腔底部に沿わせるように挿入し,抵抗や疼痛があった場合は無
理をしない
·鼻腔を通過し咽頭に至ったら唾液を飲み込むような嚥下運動を繰り返しても
らう.

·咽頭通過時、吐き気を誘発することがあるので,落ち着いてから再開する,

・食道に入れぱ透視下に確認しながらチューブを胃内まで進め,ガイドワイヤ
ーを使用して幽門輪,トライツ靭帯を越え空腸内に進める.可能ならば目的
先の拡張している小腸内まで進めるのが望ましい,

・幽門輪·トライツ靭帯を越えることが困難な場合はこの限りではない、先端
のバルーンを截留水で膨らませ,確認のため腹部単純X線を撮影する。

・チューブは鼻には固定せず頼部のみとL,たるませておくとチューブが端動で進んでいく

·胃内にチューブをたるませておいた場合,チューブを鼻翼·鼻梁に潰瘍を形成しないように固定し日々の固定の確認もおこなう。
・チューブが進んで鼻先から引き込まれる
ようになれば、「たるませる固定」に変更する、さらに病衣などに固定,

②経肛門からの挿入

·手順をよく患者に説明し,声をかけながら行う.
·経肛門的挿入では,内視鏡的に狭窄部を越えて留置する

イレウス管の挿入中の観察ポイント

セデーション(薬を使って意識を意図的に落とすこと)状態の評価、疼痛などによるショック症状の有無、急激なバイタルサインの変化の有無を定期的に測定・評価します。認知症の高齢者の場合、処置中の安全を考慮してセデーションを成人投与量より多めに投与しますが、低身長や肝機能低下により効きすぎる場合もあるので注意が必要です。その際には、バイタルサインのモニタリングや呼吸状態の把握と対応が必要です。呼吸状態の把握と対応では、呼吸抑制や低酸素血症になった場合には、まず誤嚥や気道閉塞の有無や胸郭や腹部の動きを確認します。呼吸状態は悪い時は、舌根沈下や体位による影響もあるためドクターに報告し呼吸しやすい体位への変更が必要です。呼吸数が少ない場合が、深呼吸を促します。

イレウス管の挿入手順

まず、透視・内視鏡下で経鼻から挿入します。経鼻から内視鏡を挿入し、胃に挿入したら胃液や空気を極力吸引し苦痛緩和に努めます。さらに進め十二指腸下行まで内視鏡を挿入できたら、透視下にてガイドワイヤーを挿入し慎重かつ愛護的に操作しながら、可能であればトライツ靭帯部(十二指腸空腸曲)を超えて深部に進めます。ここで、ガイドワイヤーを留置しながら内視鏡のみを抜去します。抜去する際も、再度胃内の空気を可能な限り吸収します。そうすることで、管挿入の難易度を下げ、患者の苦痛も少なく処置できます。そして、イレウス管全長をガイドワイヤーにかぶせて、体位変更や用手圧迫にて挿入していきます。最後に留置バルーンカテーテルに蒸留水を入れガイドワイヤーを抜去して終了です。

イレウス管の挿入種類

挿入種類には、経鼻挿入型と経肛門挿入型があります。経鼻挿入型は、口から近い小腸や上行結腸での閉塞の場合に選択されます。経肛門挿入型は、経鼻タイプの管より短く、肛門に近い直腸やS状結腸の閉塞の場合に選択されます。入院患者の7~8割は、経鼻挿入型の治療をされています。

①経鼻的チューブ挿入の看護のポイント

・腸の嬉動でチューブが進むのを待つ。

·鼻先にたるませて固定している場合は、チューブの進みに合わせて
調整する
·血性排液などでは性イレウスを考慮L,漠然と放置しない,
*誤抜去に注意する,

·定期的に腹部単純X線を撮影し,チユープの位置を確認する,

②経肛門的チューブ挿入の看護のポイント

·肛門からチユープが出ている状態になり(それ以外の固定はない),鼻固定と
同程度の違和感がある.
・排液の性状を確認する.
・術前処置を兼ねていることが多く,毎日1,000~2,000mLの生理食道液で洗
浄し,狭窄部口側の処置をする
・腸洗浄を行っている場合,洗浄撤が回収されているカ·どうかにも注意する,
・排液は便臭が強くなるので,部屋の換気,脱臭·消臭などにも配慮が必要.
・排液バッグには便汁が貯留するため,歩行できる患者にっいては,周りから
みえないよう排液バツグにカバーがあるとよい

必要物品の準備

イレウスチューブキット,シリンジ(バルン拡張用,造影用20mL,50mL各
潤滑剤,水溶性性造影剤,固定用絆創膏,膿盆,処置用シーツ,接続する排液バッグ

処置介助方法

・十分な説明し,患者の不安の軽減に努め,声をかけながら介助する.
・処置介助の際は患者の顔や状態とモニターの見やすい位置にいる。
・経鼻的に挿入する場合,操作中に嘔吐を誘発することが多いため,処置用シ
ーツなどで病衣や寝具が汚染されないよう保護し,対処できるよう準備して
おくようにセットする
・終了後は患者をねぎらうとともに,固定,留置したチユープの長さの確認,
排液バツグ接続などの確認を確実に行う,

体位·固定方法

・X線透視下,内視鏡下に臥位で行う,
・鼻翼·鼻梁部に固定するが、鼻翼を圧迫しないように固定する,

イレウス管 看護のポイント

・脱水予防
排液量が多い場合、脱水になりやすいためINOUTを注意する必要があります。尿量測定、皮膚・粘膜の湿潤度、採血結果による電解質異常の評価、腸蠕動音の聴診をしてください。ドクターによっては「破棄時800ml/回毎に点滴500mlを6時間で投与」と条件つき指示を出します。治療前から、イレウスによって全身状態が悪化しているため、より観察・アセスメントが重要になります。
・排液の性状、量
看護師もレントゲンを見て、イレウス管が今膨張部位にいるのか狭窄部位を通過したのかを理解しましょう。膨張部位なのに、排液量が少ない場合はイレウス管が屈曲しているが、腸壁に当たっている場合が多いです。また、ドクターの見解より早く便を吸引できている場合があるため、ドクターに報告しましょう。
・バイタルサイン
・イレウス管の挿入長さ・吸引圧の管理
イレウス管は、挿入長さ調節ができるように専用のテープで固定しています。固定が弱いとイレウス管は体外に出ていくので勤務始めと終わりにはチューブに記載してある長さの確認が必要です。また、機械で吸引を調整しており基本ボタンが触れないようにロックが掛かっていますが、たまに「停止・吸引」の数値を間違えて設定している場合や何かの拍子に設定が変更になっている場合があります。こちらも、確認が必要です。
・イレウス管固定部位の皮膚トラブルの有無
イレウス管固定専用テープは、皮膚に優しいドレッシング剤ついているものが主流です。管が皮膚に当たると潰瘍ができてしまうため、専用テープは皮膚に当たらない構造になっていますが、それでも稀に患者様から「ここ(潰瘍)がチクチクするのよね。」と潰瘍が発見されることがあります。毎日観察し、潰瘍発生時は潰瘍部にドレッシング剤を貼り除圧してください。
・患者へのイレウス管の使用指導

看護のポイント

・イレウスチューブ挿入の手順や意味(治療の必要性)について患者が把握して
いるか確認し,必要に応じて再説明をする,
・腹痛·膨満感などが出現したり,処置に要する時間が30-40分以上かかるこ
ともあるので,状況などを適宜説明し,体位変換など明確な指示を伝える。
・留置した長さを確認し,胃内にたるませているかによって固定法を確実に行う,
歩ける患者の場合,テユーブの病衣ヘの固定位置の調照排液バアグを点滴
台にかける,持統吸引器に台車をっけるなど,孝行できるように配慮する,
他のルート·ラインと整理し,患者の活動を妨げず,誤抜去されにくいよう
配慮する。

·排液の量·性状を経時的に確認していく,異常(排液過量,血性など)がみら
れたら医師に連路する,排液の方法(自然排液または器械などによる間欠的持統吸引か、またその圧設定)にを調整する,

・固定によりチユープに圧迫されて鼻翼に潰瘍をつくることがあるため固定時に注意が必要である,皮膚保護剤を固定前に塗布することがある.

・経鼻の場合,7~10日で改善がなければ手術的な治療に移行することが多い,
経肛門的の場合,数日以内に準緊急的な狭窄部の解除を目的に手術を行うこ
とが多い。