甲状腺とは、のどぼとけの骨よりも下にある重さ20-30gぐらいの臓器である。甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌し、代謝や体の動きき関わります。例でいえば、バセドウ病やクレチン病など汗などの代謝や手足の震えや目の動きが異常になるなどの疾患がある。良性腫瘍、悪性腫瘍(癌)、バセドウ病も摘出手術が行われる。
甲状腺腫瘍による摘出は、部分切除・亜全摘・全摘と腫瘍範囲により切除範囲は変わります。左右で別れているため、ドレーン挿入は腫瘍部で片側ごとに1本挿入し両方では2本挿入することになる。
ドレーン挿入の目的
·皮下·創部血腫の予防
·リンバ漏,乳び漏の早期発見
ドレーン挿入の適応
·血腫形成により、周囲が圧迫されれば気道狭窄の原因や神経が付近にあるため圧迫されることで反回神経麻痺ともなるため予防的に挿入される
·リンバ漏や乳び漏がないか,検査ドレーンとして排液などを診るために挿入される
·近年は切除範囲が小さく,術中の止血処置が十分に行われていればドレーン留置は不要との意見もある,
ドレーンの種類
陰圧かけて持続吸引されるバックを用いる閉鎖式ドレーン
(SBバック、リリアバック、J-Vacなど)
・ドレーン先端が滅菌バックに連結されているため外気にふらないため感染しにくい構造である
・ガーゼ交換時には、挿入部の状態やドレーンがぬけていないか、バックの貯留量や色を確認する
・患者の体位変換時や移動時はドレーンを抜去しないように注意する
・ドレーンの自己抜去に注意する
*以前はペンローズドレーンなど開放式ドレーンが用いれたが,逆行性感
染の可能性があるため,近年では閉鎖式ドレーンを用いられる。
挿入部と経路
·鎖骨下あたりから挿入し、手術創の気管の傍らを通過し胸骨上部に留置する
·手術切開部は,頸部の露出部はできるだけ避けるようにし、鎖骨のギリギリ上あたりにする
·内深頸領域のリンバ節郭清を行った場合は,静脈角部に留置し,刺入部も頭部
上方外側となる.
固定方法
·皮膚に絹糸などで固定糸をかける
予想される合併症
·ドレーン閉塞による合併症(血腫,リンバ漏など)
·ドレーンからの逆行性感染
・手術による合併症
抜去時期
・血腫形状がないこと、リンパ漏や乳び漏、多量出血がなければ抜去する
・24時間後には、淡血性へとなり排液量が30ml以下であれば抜去可能である
(近年、ドレーンの留置期間は短くすることで感染のリスクも高まり、予後もかわらないという報告がある)
・通常は、術後2〜5日で抜去することが多い。
排液の性状
・排液の性状は挿入初期は血性であるが、淡血性→漿液性と変化する。
・リンバ漏の排液の色は、淡黄色
・乳び漏の排液の色は、白色懸濁性(はくしょくけんだくせい)
看護ケアのポイント
・吸引バックやドレーンが引っ張られてドレーンが抜けてしまうため、誤抜去に注意する
・バックは、ドレーンの位置から考えても首から下げられるような袋にドレーンバックを入れることで抜去をふせぐことができる。
・陰圧の強さは担当医に確認し、その陰圧が保持されているかを確認する
·縫合不全,ドレーン挿入部の創部離開(傷口がひらくこと),ドレーンの抜去などにより陰圧が保持されなくなると吸引が行われなくなる。
これでは、血腫形成、そして血腫形成による気道狭窄や神経麻痺のおそれや二次感染のリスクが高くなるので,すぐに担当医に報告する
·ドレーン腔内の血液の凝固により,ドレーンが閉塞し排液困難になるため適宜ミルキングを行う
·排液が急に減少した、もしくは排液が少ない場合は,ドレーン閉塞を疑い創部の腫脹がないかどうかを確認する
リンパ漏になった場合
・悪性腫瘍では広範囲のリンパ節の切除(リンパ郭清)を行うことも多い。通常でもリンパ液が術後4-5日は排液される。しかし、頚部の血管付近には太いリンパ管があり損傷し術後にリンパ液の漏れを起こした場合は1日500ml以上排液される。これがリンパ漏である
・ドレーンからの排液が淡黄色で術後数日過ぎても減少しない場合は,リンパ漏が考えられる。
·リンパ漏の状態が軽度の場合は,貯留液を十分吸引し、ドレーンを抜去し、穿刺吸引と圧迫することで症状の改善がみられる。しかし、再手術(損傷されたリンパ管を閉鎖するリンパ痙閉鎖術)や薬液注入療法になる場合もある。
乳び漏(にゅうびろう)になった場合
·リンパ漏と同じ理由として悪性腫瘍では広範囲のリンパ節の切除を行う。
・乳び漏とは、特に左側の頸部リンパ節を郭清すると、時に胸管という太いリンパ管の枝から大量の白色な液体が流出すること。
・乳び漏では,経口摂取せず絶飲食として、甲状腺周囲を圧迫固定する。改善しない場合は損傷されたリンパ管を閉鎖する手術を行う。