心嚢とは、そもそも心臓を包む袋です。その心嚢内は心嚢液に満たされている。
心膜といわれることが多いですが、心膜穿刺は心囊ドレナージでもある。

適応

①心囊水貯留によって心臓の拍動が十分にできず(とくに拡張)全身から心臓への血液の流れが障害されます。これが、「心タンポナーデ」で、動脈圧低下・心音微弱・頻脈生不整脈・心不全の症状がでている場合
②開心術後(心嚢は解剖学的に体腔があり、液貯留しやすい。大量に貯まると心タンポナーデになるためそうならないようにの予防。)
③感染や尿毒症などに引き続く心膜炎の診断と治療
④外傷、急性心筋梗塞による心破裂

心タンポナーデ状態とは…..

1、血圧低下
2、静脈圧上昇
3、心音微弱
4、心拍数は上昇
5、血流現象
6、尿量現象
*特に、

1、血圧低下
2、静脈圧上昇
3、心音微弱
は、「Beckの3徴」と呼ばれる

→その後、血圧が低下し、脈圧は低下、中心静脈圧が上昇して、ショック状態になるので、これらの徴候を見逃さないようにする

目的

そこで、上記のような場合で異常に貯留した心囊水を診断や心不全の目的で排液する(これが、心囊ドレナージ)

種類

・心囊穿刺法:針を心臓にさして心囊水を採取または排液する方法
・持続ドレナージ:皮膚切開から心囊に到達してドーレンを留置し、陰圧的に持続で心囊水を排液する方法

刺入位置、留置する場所

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刺入位置は違うがいずれも心囊腔に針先、ドレーン先がくるようにする
・剣状突起下から留置
・左第4〜5肋間胸骨左緑から留置
・心尖拍動部(左第5肋間)に留置
・心臓エコーやCT検査の所見を参考にマーキングを行い、穿刺法の場合はとくに肺・心臓・血管を損傷しないように経路を考える必要がある
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予想される合併症

・心臓の損傷(心タンポナーデ、出血性ショック)
・肺の損傷(気胸)

看護のポイント

・ドレーンが細いと閉塞しやすく、血性心囊水貯留では心タンポナーデの再発に注意する
・呼吸性の変動や心拍動の伝達でドレーンの開放したままに注意する。
・閉塞したら医師に報告し、抜去や入れ替えの必要がある
・穿刺時や留置中は呼吸性の変動と陰圧がかかるので、逆行性感染の危険性がある
・刺入部位を確実に固定し、空気的密閉と清潔を確保する
・ドレーンが抜けそうでも感染のリスクがあるので再挿入はしない
・ドレーンを固定するためのテープやマーキングなどを行いドレーン抜去や位置ずれを予防する

ドレーン抜去のタイミング

・ある程度安定期を迎えたことが確認できてから
・実施数日から数週間程度(3、4日程度)
*ドレーン抜去は、看護師特定行為としての項目でもあります。

心嚢(心膜)穿刺・心囊ドレナージの方法

必要物品

・消毒(イソジン、綿球、ガーゼ)
・ドレープ
・局所麻酔(局所麻酔(キシロカインなどの)、シリンジ、針)
・センルジンガー式穿刺セット
・皮膚縫合セット(持針器、消毒綿球、針、糸、せっし、クーパー)
・ドレーン使用時はドレーンバッグとドレーン、固定テープなど

心嚢穿刺・ドレナージの方法

は2つ
剣状突起下に穿刺する方法
第5肋間胸骨左縁に穿刺する方法
である。

心嚢穿刺・ドレナージの手順
1.傷病者を角度が30~40度くらいの半坐位(重症の場合は仰臥位も可)
2.心電図モニターを装着
3.穿刺部位を中心に直径約20㎝の範囲を消毒し
4.エコーによるガイド下(echo-guide)で行う。

①剣状突起下(Larrey point)からの刺入

前処置のあと、
5.局所麻酔
6.注射器を接続した穿刺針(エラスター針)を約30度の角度で刺入する。

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②第5肋間胸骨左縁からの刺入

5.局所麻酔
6.穿刺針を超音波プローブのエコーで、心嚢への深さや方向を確認しながら心臓に向けて刺入する。

*もし、排液されない場合は血液がかたまっている(コアグラ)おそれがある。そのときは、心嚢開窓術、心膜切開術をし、直接診て処置する必要がある。る。

針先が心嚢に達したら(排液確認後)、剣状突起下からと心嚢穿刺と同様である。↓
7.針は4~5㎝で心膜に達し、針先が心嚢内に入ると貯留液の排出される。
8.排液を確認したら、穿刺のテフロン外筒部だけを2㎝ほど挿入し、金属内筒部を抜去する。
9.その後は外筒部の一方を排液チューブに接続してドレナージを行う。
10.穿刺中に心電図を監視し、もし不整脈が認められるような場合は、針を少し引くなどの調節をする。

看護のポイント

・清潔操作を遵守し、感染予防に努める
・心囊液を時間ごと1日ごとに計測・評価し、心囊が溜まった原因疾患の改善とともに観察する
排液量の増加(200mlの排液は異常である)は術後出血の可能性もあるので医師に報告する

阪和記念病院

心膜穿刺ドレナージカテーテルセット
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