気胸とは、そもそも肺に穴が開き胸腔内に空気が漏れてしまい、空気が溜まっている状態をいいます。漏れ出た空気により肺が押されて膨張できなくなり、呼吸が苦しくなります。

胸腔ドレナーンはこの胸腔内の空気を抜き、肺を膨らますために入れられます。胸腔内は常に陰圧を保つことで、肺胞の拡張、収縮を促し酸素交換を行っているので、陰圧にたもられていない状態だと酸素がうまく取り込まれなくなるのでこの陰圧になってることが重要です。

*胸腔:体の内腔で横隔膜によりくぎられた腹腔よりも上の空間。肺、気管などがの器官があります。

胸腔ドレーン挿入の適応例

・自然気胸、外傷性気胸、
・血胸、がん性胸水、心不全、膿胸、乳び胸など

胸腔ドレーン抜去時期の目安

気胸:エアリークが消失し翌日レントゲンで肺の膨張を確認
吸引をクランプし、器械で陰圧にしてなくても翌日のレントゲンで肺の膨張を確認できる場合
胸水
・排液量100cc~150cc以下で漿液性で排液の減少がみられ、レントゲンで胸水がへったことがわかり、肺が拡張を確認できた場合
・持続的に胸腔ドレーンを留置してた場合は患者の症状が改善した場合

胸腔ドレナージの目的

胸腔内に貯留した余分な液体(血液・腫瘍・浸出液・漏出液・乳びなど)や空気の脱気(気胸)
②開胸術や気胸で陽圧になった胸腔内を
排気して、陰圧にして正常な圧にする。
③術後、胸腔ドレーンを留置することによって、ドレーンからの情報(排液の量、性状、排気の有無など)により創部の癒合状態を確認する。

胸腔ドレーンの看護ポイント・注意点

・処置後、約15〜30分ほどすると局所麻酔がきれて、ドレーン挿入部痛が出現する。前もって、医師に疼痛時の指示を確認しておくと同時に患者に痛みは我慢せず早めに伝えてもらうように説明をする。
・気胸・胸水があるときは、肺の再膨張による胸膜進展のために疼痛が出現することがある。あらかじめ患者に説明をし痛みは我慢せず早めに伝えてもらうようにする。
・大量の胸水を一度に排出するとショックを起こすことがる。一度に1000ml〜1500ml以上は排液しないようにする。
・ドレーンが自己抜去されないようにドレーン部の固定部、接続部を確認する。
・患者の生活動作を考え、胸腔ドレーンが引っ張られたり。挿入部より高くならないように排液バッグの位置を確認する・
・ドレーンから排液の性状・量・匂いを経時的に観察あるようにする。
・胸腔ドレナージバックは身体よりも20㎝以上低くする
腹腔内と違い、胸腔内は肺の弾性により、常に陰圧

エアリークとは?

そもそもエアリークとは”空気漏れ”のことをいいます。
胸腔ドレナージでは、「胸腔内から気体が排出されている状態」をいいます。
気胸でドレナージを入れている場合では呼吸時に吸引器内に水がポコポコと空気が出てきます。
呼気時のみにみられる場合は、軽度の損傷で自然に治まることが多いです。

このポコポコと気泡が多いときは気胸の穴が大きく空気の漏れが多いです。
徐々にこのリークが少なくなり、完全になくなると気胸の穴がふさがったのでドレナージの抜去時期が近いことをしめしますのでエアリークの観察はしっかりしましょう。
排液ボトルの隣にある水封室の液体に、気泡がポコポコと出現することをいいます。

挿入位置

気胸の場合
空気が上部(胸側)に貯留するため、鎖骨中央線上、第2~3肋間から肺尖部①に挿入。

⑤(1)
胸水膿胸の場合
重力によって、下部(背側)に貯留するため、中腋窩線上6、7肋間や5、6肋間

⑥(1)

肺切除後に気漏がある、またはその予測される場合
2通り行う場合
液体:背側中腋窩線上6、7肋間や5、6肋間で液体をドレナージし
気体:胸側第2~3肋間から肺尖部でドレナージする。

⑦

低圧持続吸引器の仕組みとチェックポイント

低圧持続吸引器、胸腔ドレナージユニット(チェストドレーンバッグ)

と呼ばれるものがセットになっている場合が多い。

②3連ボトルがまとめてある
1、排液ボトル
貯留している液体量に応じて、持続的にドレナージしたほうが良いかどうか
をみる
2、水封室
ここには必ず水(蒸留水)水位2cmが入っているこを必ず確認する。
呼吸によって水位が上下します。この水位の変動は「呼吸性移動」。
空気漏れ(エアリーク)が起こった際にブクブクとした気泡が発生する。
3、吸引圧制御ボトル
・水位10cm~20cmほどの水が入っており、壁吸引器を接続され、陰圧を一定
の陰圧に調整する場所。
・持続的に気泡が出る強度の範囲が陰圧の適正値に設定されています。この強度の範囲が適正でない場合には、肺や胸壁を損傷させる危険性があるため、必ず少量の気泡が持続的に発生するよう調節する

*ここの水位があがったままだと、肺の陰圧が保てなくなり肺が陽圧つまりふくらみすぎてしまう。肺が膨らみすぎて、胸腔内にすきまがなくなり、肺とドレーンがぴったりくっついてしまっている状況が考えられる。
もしくは、ドレーンのつまりの可能性もある。発見時は担当医に相談する。

バブリング(エアリーク(空気漏れ))
・胸腔内から胸腔ドレナージユニットのあいだにエアリーク(空気漏れ)がある場合、水封室に連続的に気泡が発生する。
・このエアリークの有無はドレーン抜去かどうか?または、腹腔鏡下ブラ切除術に関わる重要な要素である。
本来、密閉された環境であるはずのドレーン回路からエアリークがあるとすれば胸腔内に異常があるか、ドレーンの回路のどこかにゆるみが発生している可能性があります。
レーン挿入後も数時間あれば、気胸の原因の穴が閉じていません。

呼吸性移動(フルクチュエーション)
・呼吸運動に伴い、水封室の液面が数cm上下する
・ウォーターシールエリアの水面は胸腔内圧の差で上下していますが、これはしっかり密閉された状態がキープされていることと、カテーテルやドレーンが詰まっていないことが分かります。
*気胸の場合の呼吸性移動(フルク)は回復し肺が十分に再拡張したとき、ドレーン先端が肺に圧迫されてしまいフルクテーションが消失する場合は、トラブルではなく、ドレーンの抜去時期の目安である。
*定期的にレントゲンでとり抜けがないかをチェックするこでも確認できるため抜けているおそれがあればレントゲンの撮影を行う

必要物品

・モニター(心電図、spo2)
・アスビレーションキット
・トロッカー(必要なFrを用意気胸12Frから16Fr 血胸はさらに太いもの)
・ビニールシーツ(患者の下に敷くよう)
・滅菌ガーゼ
・消毒キット イソジン
・縫合セット(ナートの受針器 メス刃 ペアン鉗子曲など使用)
・穴あき
・滅菌手袋(Drに合わせて)滅菌ガウン
・黄色ビニール 角針3か4か5
・糸3-0シルク他
・局所麻酔キシロカイン1% 10ccディスポ 23G針 カテラン針22Gor23G
・カラヤヘッシブ
・カテーテルチップ
・Y字ガーゼ
・キューインワン(胸水を抜き検体を出すだけの時は使用しないこともあり・ウォーターシールまで生食で満たしておく・可能なら吸引圧も確認し用意しておく)
・固定用テープ (シルキーテックスなど)
・ハイポエタノール(終了後イソジン消毒の拭き取り用)
・超音波機械

トロッカーカテーテルとアスピレーションキットの違いは?

アスピレーションキットには一方弁があり、ディスポを使用し吸引することができることや逆流しない。
アスピレーションキットの方がサイズが小さくサイズによってはつまりやすい。
トロッカーカテーテル :8~32Fr
アスピレーションキット:6~12Fr
気胸=16Frから22Fr
胸水=20Fr~32Fr(膿や血胸の場合は太いものを選択するのが好ましい)

胸腔ドレーンの挿入順序

①挿入側の上肢を拳上する半座位など適した体位をとる

②挿入部をイソジン消毒した後、滅菌ドレープ(滅菌布)をかける

③挿入部周辺に局所麻酔をする

④メスで切開し、ペアンで穴をあけ、胸腔ドレーンを挿入する

⑤低圧持続吸引器(胸腔ドレナージユニット)とドレーンを滅菌操作で接続する

⑥排液やエアリークの有無を確認した後、縫合する

⑦挿入部にドレッシングを行い、固定用テープで固定する

⑧ドレーンの先端をX線レントゲン画像で確認し正しく挿入されているか確認する

⑨術後は、バイタルサイン、呼吸音の左右差、呼吸性移動(フルクチュエーション)、肺の動き、皮下気腫、エアリークの有無など細かく観察する(適時経過観察を行う)
*術中は、局所麻酔で行う場合は看護師が患者の様子を確認する必要がある。

胸腔ドレーン抜去の基準

①エアリークがないこと
エアリークテストで確認します。

胸腔内圧を高めることでエアリークがでないことを確認する3つの方法
1息を吸ってを思いっきりはき出す(これをすることが多いです)
2「あ〜」と声を出すことで息を出す
3咳払いする(これはあまりしないです)

②排液が血性や膿性でなく、排液が漿液性〜淡血性になり、
150ml-200ml/日以下
であること。(排液量は医師の判断によることが多い)
③胸部レントゲン上,肺の拡張に問題がないことを確認する

胸腔ドレナージによる皮下気腫のおそれ

皮下気腫は触診で確認でき、胸腔内の空気が空気が肋骨の間を抜けて皮下組織(または胸壁)まで漏れたというに漏れた状態をいいます。
外傷性や自然気胸でも皮下気腫のおそれがあります。

触診では、皮下気腫のところは少しふくれていて空気が漏れている状態ですのでブツブツとした特徴的な握雪感(あくせつかん)があり、ドレーン挿入
創、開胸創からの空気の漏れが原因です。
皮下気腫は、ドレナージがしっかりできてなく排液が十分ではない時に、胸腔内の空気が皮下に流入して起こります。
皮下気腫を認めた場合は、マーキング(印をつけて)で経過をみていきましょう。