人工透析は、腎不全などで衰退した腎機能を補うために行われます。
その腎臓の役割についてから…

4つ腎臓の機能とは?

①尿毒を取り除く

腎臓の代わりに、体内に溜まった老廃物(尿毒素)を取り除きます。

②余分な水分を取り除く

体内の過剰水分を取り除きます。

③電解質を整える

ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどの血液中の電解質(イオン)を、過剰であれば除去し、不足しているものは透析液から補って、正常なバランスに近づけます。

④血液pHを調整する

血液が弱アルカリ性になるように、透析液からアルカリ成分を補います。
これらの機能が低下すると、十分な濾過機能が働かなくなり、身体中に老廃物が溜まり、尿毒症になる。この尿毒素を取り除くのが、透析です。


以上、4つの腎臓の役割を果たすのがシャント増設する目的です。

血液透析の方法は?

・透析はベッドに寝たままで注射針を2本穿して平均4時間かかる。(週2・3回病院へ通うことが必要)
・仕事をされている方は、夜間の透析を行っている施設もある。
・一時的に透析を導入する場合はブラッドアクセスカテーテル(ショルドンカテーテル)を入れる
・長期に透析を行う患者にはブラッドアクセスと呼ばれる血液を短絡化させることをシャントを造設する手術を行う

シャントとは?

動脈と静脈をつなぎ合わせた血管のことをいいます。

シャント手術とは?

・手術は局所麻酔下で、一般的には30分~1時間くらいかかります。
・利き腕ではない側につくるのが一般的です。
・シャントが完成すると、動脈の血液が静脈に流れ込むため、静脈が膨らんでき ます。手術後1~2週間ほどで透析に使用できるようになります。

シャントの仕組みは?

・シャント部分の静脈はふつうの静脈と違い、勢いよく大量の血液が流れている。
・ここから1分間に150〜200mlの血液が透析の本体であるダイアライザー(透析 
 器)で血液と透析液が接し、尿やリンなどの尿毒生物質が取り除かれます。
・効率的に透析を行うために流れがはやいが、それでも平均4時間はかかります。

患者に造設されるシャントであるバスキュラーアクセス(VA)の種類は?

”シャント”と”非シャント”の2つに分けられます。

シャント

動静脈間に血流を流し,その流れを利用して透析を行うものです。

外シャント

・先端を腕の動脈と静脈に挿入し、チューブを介して動脈と静脈を連結する体外に留置する増設術。
・しかし、血液の凝固が起こりやすく感染症の発症率高い
内シャント(皮下で動静脈をバイパスするもの)(血液の凝固はほとんど起こらず、また感染症の発症率も外シャントより低い)
a.AVF(arteriovenous fistula):自己血管内シャント:直接動静脈吻合

b.AVG(arteriovenous graft):人工血管内シャント:人工血管で両者をバイパス

非シャント

・いずれも動静脈間のバイパスがありません。
・シャントで生じる非生理的血流がなく,心負荷がないことです。
カテーテル法
a.カテーテルはカフを有さない「非カフ型カテーテル」主に短期使用
b.カフを有する「カフ型カテーテル」主に長期使用に適しています。
動脈表在化法
表在化する動脈は主に上腕動脈と大腿動脈があります。動脈で脱血して,皮下の静脈に返血し透析を行います。大腿動脈の表在化は手術侵襲が大きく,また合併症も多いため現在では行われることが少なくなりました。

穿刺を上手くいれるための取り組みとは?

・止血チェックリスト
・手カルテ:PTA情報と腕の写真、エコー管理情報などを載せて共有を図っている
・透析室でエコーを取り入れて、それに対応した看護師のステップアッププログラムを作成する。ハンディーエコーを使った穿刺トレーニングは、勘に頼るのではなく視覚でしっかり確認をすることができる。確実な穿刺や止血のスキルアップへ繋がる。

シャントの観察項目

シャント音の確認
・狭窄や閉塞の早期発見のためにシャント部位に聴診器を当て、血管音を聴取す
 る。
・聴診器を当てたときにザーザー、ゴーゴーという音がしっかりと聞こえるかを
 確認する。
・ヒューヒュー、シャッシャッと高い音になったり、音が弱くなり小さくなった 
 場合にはシャントの狭窄が考えられるため医師へ報告する。
②シャントのスリル(振動)の確認
 ・スリルとは、いわゆる「振動」のこと。
 ・シャント部に手を当てると特有の振動がありそれの強弱を確認する
  (スリルが弱い場合は狭窄を考え医師へ報告)
②シャント部位の圧迫を避ける
・血圧測定などはシャント側でしないようにする
・衣類などによる圧迫がないかや移動時など重たいものなど腕で持たないように 
 注意を促す
感染予防に努める
・採血等はシャント側では行わないようにしてシャント側は傷つかないように注
 意する
・前回の透析時の穿刺部の観察。
(発赤・腫脹・疼痛の有無)
④透析日は透析日はシャントの感染を防ぐため入浴しない様に促す。
⑥造設側の腕の血流障害が起きていないか、手指の冷感・色・しびれ・痛みの確認

閉塞の原因は?

①低血圧や血液凝固能の亢進があると、血液が固まりやすい
②シャント部位を圧迫すると血液がながれなくなり、つまる
③長期間 シャント血管を使っている間に血管が細く、狭窄する。

シャントの合併症は?

①狭窄 
②閉塞 
③感染 
④動静脈瘤 
⑤過大シャント 
⑥静脈高血圧 
⑦虚血

透析の注意点とは?

・バイタルサイン(特に血圧が重要である)
・透析前の内服薬の確認
 血圧が下がる患者さんなどにリズミックを飲ませてから透析を行うことなどが 
 あるため
・透析前のペンレスの使用の有無の確認
・その他透析患者さんの申し送りの確認
(コップを持参や点滴などの時間指示があるものや食事など)
・透析前体重の確認
透析後の確認
・透析時のバイタルサインの変動や徐水量・透析時間の確認
(何か使用した薬等があればそれも確認)
・患者さんの訴えや全身状態の観察
・シャント部位の観察
(シャント音、スリル、出血の有無、+圧迫解除後は疼痛、発赤、腫脹の有無)
・持参薬や持参物の回収(点滴やコップなど)
・病室の環境整備
・内シャントを作成してから実際に透析で使用できるようになるまで2週間程度必要
・内シャントは血液透析患者にとって命綱であり、日常生活でも注意点が色々ある
・腎不全の状態にもよるが、通常は2~3回/週のスパンで、1回あたり4~5時間かけて行われるため、社会生活に大きな影響を及ぼす。