坐薬は肛門から直腸内に挿入し、直腸粘膜から吸収されます。
直腸粘膜は表面積が小さいため、一般的には吸収は遅いが、肝臓を通らずに体循環に入るため、代謝による変化は受けにくい。
体内に入った坐薬は、10〜30分後に完全に軟化溶解する。
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目的と適応

・薬物が胃腸に刺激を与えることを控えたい時
・消化器症状、嚥下困難、意識障害、咳嗽の症状が強い場合など、経口的与薬が
適さない患者
・高齢者、小児にも安全であり、嘔吐・痙攣がある場合
・錠剤では効かない場合の疼痛時
・乳幼児など口からの服薬が難しい時

全身作用:鎮痛、解熱
局所作用:排便促進、肛門部の鎮痛

禁忌

下痢や下血がある場合は適用できない。

必要物品は?

①処方箋
②指示された薬物
③ガーゼ
④潤滑剤
⑤膿盆
⑥ゴム手袋
⑦トレイ
⑧その他(必要時):毛布、タオルケット

座薬の入れ方(直腸内与薬法)

しり
①患者に与薬の説明を行い(意識障害のある患者の場合にも必ず声をかけてから行う)、患者または家族の承認を得る。

②排便促進を目的とする場合の他は、あらかじめ排便を済ませてもらう。
坐薬を挿入する刺激で排便が促されることがあるため、また、挿入後、完全に溶けて吸収されるのに約10〜20分かかるため、吸収される前に排便をすると薬物が一緒に排出されてしまう。
③医師の指示書に従い、患者氏名・投与薬剤・用量などをダブルチェックで確認する。
④カーテン、毛布やタオルケットを使用し、不必要な露出を避ける。
⑤体位はできるかぎり左側臥位で行う。
*左側臥位がとれない場合は、仰臥位にし、膝関節、股関節を屈曲する
直腸の解剖学的な位置から左側臥位が好ましいとされているが、直腸内への挿入深度は浅いため、どのような体位でも挿入は可能である。膝関節を屈曲すると、腹圧がかからず挿入が容易になり、また、肛門を観察しやすくなる。
*坐剤は浣腸程体位を問わない事が多い。

⑥手にディスポ手袋を着用する。坐薬を包装紙から出して、先端に潤滑剤をつける。坐薬が排出されないよう挿入後ガーゼかティッシュペーパーで約1分間肛門を押さえる

⑦肛門を利き手でない方の手で開き、腹圧をかけないため肛門括約筋を弛緩させることができるため口で呼吸することを伝える。「では息を口で吐いててください」というタイミングで素早く挿入する。利き手の示指で坐薬を尖った方から肛門に挿入し、直腸壁に沿って肛門入口より3~5センチの所まで挿入する。
肛門の入り口には括約筋があり、挿入が浅いと、この括約筋によって座薬が排泄されてしまう。また、坐薬は、自然に肛門に入りやすく肛門内に入ると最大径の部分が肛門括約筋の収縮により締めつけられて排出しないような形になっている。
⑧立位のできる患者の場合は、挿入後でてこないことを確認しながら立位してもらうことですんなりと座薬が入っていく。