グリセリン浣腸目的とは?
腸壁を刺激することで、排便・排ガスを促す
主に浣腸では直腸およびS状結腸の固形化した便を軟らかく滑らかにし、速やかに排便を促す。
グリセリン浣腸の作用は?
浣腸液を直接腸へ注入することで、大腸を機械的に刺激し、蠕動運動を促進させる。
グリセリンは油性なので、便の滑りを良くして排便を促す。
グリセリン浸透圧が高く、腸管からの水分を吸収しやすいほか、便に溶け込みやすいので便を柔らかくして、排泄しやすくする。
適応は?
腸管の内視鏡検査や造影CTの前の処置
手術の前処置
バリウム後を含めた自然排便困難時
副作用は?
グリセリンの液は無害なので副作用はないが、浣腸による刺激や排便により腹痛、残便感、肛門不快感、血圧上昇・低下がある。
排便後迷走神経の刺激により、一過性に血圧低下し意識消失を伴う場合もあるので、特に高齢者の場合には、血圧の変動とともに転倒・転落に注意する必要がある。前後のバイタル測定を行うようにする。
浣腸の注意点とは?
・浣腸液を温めすぎないこと。
直腸温には低温のグリセリン浣腸の方が、直腸の粘膜には低刺激であるこtが
データからもわかっています。浣腸液を温めすぎると、腸の粘膜を傷つけてし
まうおそれがあります。
・中腰や立位でしないこと。
シムス位がよいです。
立位ですると、肛門部を看護者が観察することは困難です。
肛門から直腸前壁まで平均7cmで8cmの人も5cmの人もいます。
いつも通り6cm挿入してしまえば、直腸穿孔を起こす危険性あるのはもちろん、
穿孔しなくても、粘膜損傷部からのグリセリンが血中に入り、
赤血球の障害と、溶血から腎不全を合併したアクシデントや死にたる事故もあります。
・カテーテル挿入は6cm以下
今は6cm以上カテーテルを挿入すると、粘膜損傷の危険性があると言われていて、研究でも発表されている7cmまで挿入可と書いている文献もあるが、実際のところ、6cm以下が望ましい。6~10 ㎝とか看護学のテキストで学んだ方も多いと思いますが…。
・浣腸後、副作用の観察を忘れずにバイタル測定を行うようにする。
・浣腸後、穿孔や粘膜症状の危険性もあるので、腹部症状や排泄物の確認を行うこと。
・患者から異変の訴え、異常な腹痛や顔色不良、異常な出血量など異変があった場合は、すぐに医師へ報告すること。
必要物品は?
指示量の浣腸液(60mlや120ml)
潤滑剤(ワセリン・オリーブ油・キシロカインゼリーなど)
ガーゼ、ティッシュ
防水シーツ
ゴミ袋
血圧測定器
コッヘル
キシロカインゼリーを使う場合の注意点は?
キシロカインゼリーは局所麻酔薬であり、副作用もあり、キシロカイン中毒などでショックになる場合もあるので、事前に局所麻酔のアレルギーがないか確認する必要があります。
歯医者の麻酔もキシロカインなので、多くの人が経験しているであろう歯医者の麻酔で、気分不快がなかったか聞くことで確認できることが多いです。
手順と手技は?
①患者への目的、方法、所要時間を事前に説明し同意を得る。
浣腸液注入後、1~3分我慢してもらうことも伝える。
排尿を済ませておいてもらう。
浣腸液(グリセリン液)を人肌程度に温める
*最近の研究では、教科書で学んだ40度では粘膜損傷の危険性が示唆されてお
り、冷たくない程度の人肌程度がよいとされている。
②浣腸液が温まったら、ディスポ手袋を装着し、浣腸液、潤滑剤、ガーゼ、コッヘル、ゴミ袋を持って患者のもとへ行く
③カーテンを閉め、腰・臀部の下に防水シーツを引く
患者のパジャマのズボン・下着を脱がせ、バスタオルを上からかけ、かるく足を曲げた状態の左側臥位になってもらう。
*腸の構造が直腸、S状結腸、下行結腸になっているため、右側臥位では下行結腸に浣腸液が流れません。
*足を曲げることで腹圧がかかるのを防ぐことができます。
*立位で行うことは直腸穿孔の危険があるため行ってはいけません。
④グリセリン浣腸のキャップを取りチューブ内の空気を抜く
コッヘルで10㎝上の部分をとめる。ストッパーつきの場合は5~6㎝の位置に
ストッパーを移動させる。コッヘルがない場合はメモリを確認する。
大人で5~6cm、子供は3~4cmくらいが目安。
簡易的には浣腸が入っていた袋などに潤滑剤をだしてチューブにつける。
ガーゼに潤滑剤をつけてチューブ先端6㎝までを包み、チューブを回して潤滑
剤を塗布する。患者に声をかけ、殿部を露出する。
*ただでさえ羞恥心を伴う処置なので、露出は最小限に。
⑤「口でゆっくり深呼吸していてください」と声をかける。
左手で患者の上側の殿部を持ち上げ、右手にグリセリン浣腸の先端の部分を持ち患者の呼気時に肛門からチューブを回転させながらゆっくり挿入する。
5~6㎝挿入したら、コッヘルをはずし左手でチューブが抜けないように固定し、右手で容器を押しつぶすようにしてゆっくりグリセリン液を注入する。60mlであれば20秒程度かけて注入する。
*注入中、後に患者の気分不快、吐き気、腹痛、冷汗を観察する。
⑥グリセリン浣腸を注入後、右手でチューブにコッヘルを再度止める。右手で容器を持ち、チューブの液の飛び散りを防ぐため左手で用意したガーゼを持ち肛門部を押さえ静かにチューブを抜去する。オムツすばやく装着または、下着やズボンをすぐにあげて寝衣を整える。
患者になるべく1~3分排便を我慢するように伝え、排便後 排泄物を流さずそのままの状態でナースコールを押すように伝える。
*また最近ではグリセリン浣腸は即効性があることがわかり、必ずしも我慢させる必要はありません。
⑴ある実験ではグリセリン浣腸後の排便までに要した平均時間は約 40 秒です。その後は断続的に排便作用が持続しています。
⑵別の実験においても、グリセリンの作用は即効性で投与後直ちに排便が認められました。
→グリセリン浣腸後に我慢を強要することにより患者は不快な強い便意で苦しむ場合があることを理解する必要があります。
⑦排泄物の量・性状、患者の気分や顔色・腹痛の有無・吐き気・残便感の有無を観察する。バイタル測定を行う。
後片づけをする。
記録する。