アンビューバッグという名前は
アンビューバッグ(Ambu bag)は1953年にドイツのAmbu社の名前が一般的となっていることから、
今でも臨床の場ではアンビューバッグと呼ばれることが多いです。
『手動で人工呼吸を行うためのバッグ』ということになります。
正式名で『バッグバルブマスク(BVM)』だとか『蘇生バッグ』と呼んでいる医療施設もあります。
アンビュー社HPより
アンビューバッグの構造は
フットボールのような楕円形の丈夫な風船で、透明や黒色などの色をしています。
バッグと呼ばれる所以となっている風船部分の2箇所に一方弁が付いていて、バッグ内の空気が一方通行になっていることや、空気を押し出してもひとりでに元に戻ることができるのが、このバッグの最大の特徴です。
2箇所の弁の一方に患者さんの鼻と口を覆うマスクが取り付けられるようになっており(気管内挿管後に使うときはチューブに接続することも可能)、もう一方ではバッグ内に空気を取り込むだけでなく、必要に応じて酸素を供給するために必要なリザーバーバッグと呼ばれる別のバッグを接続できるようになっています。
アンビューバッグの仕組みは?
リザーバーバッグを接続しないで、アンビューバッグだけで用手人工呼吸を行う場合には、患者さんに空気を送ることになります。
当然、緊急で人工呼吸が必要な患者さんにはこれでもいいのですが、中には酸素濃度を上げなければならない患者さんもいます。
そういう場合にはリザーバーバッグを接続して酸素を流入すれば、患者さんに100%の酸素を送ることができるようになります。
ただ、この場合は酸素ボンベなどとの接続が必要になってきます。
アンビューバッグの使う時はどんな時?
アンビューバッグをいつ使うかについてですが….
・患者さんの呼吸がないときや不十分なとき
・あるいは救急車での搬送の時などに使うことはもちろん
・停電などにより人工呼吸器が動かなくなった時
・人工呼吸器が故障してしまったときの人工呼吸など人工呼吸器を持ち込めないような電車内、飛行機内、お風呂などで使うことも多いです。
に使用されます。
ですから、人工呼吸器装着中の患者さんのベッドサイドに常備して、いざというときにいつでも使うことができる状態ではければなりません。
そして使う時はいつも死と向かい合わせの状況ですのでしっかり使い方はマスターしておかないといけないのです。
具体的な使い方
①気道確保します。臥位にして、患者さんの下顎を十分に上に向けてください。
②アンビューバッグに接続したアンビューマスクで、患者さんの鼻と口をしっかり覆います。
③バッグから空気を送り、患者さんの胸郭がちゃんと上下しているかを確認します。
上下していれば、肺に空気を送り込めているということになります。
*胸部挙上が確認されかつ腹部膨満しない程度。
④平均的なペースとしては、バッグを5秒に1回押しつぶして空気を送り込みます。
送り込むときには、必ず1秒はかけてください。
*あまりにも空気を送り込みすぎると、過換気症候群となってしまうだけでなく、肺が破れてしまうことがあります。
停電などでアンビューバッグを長時間使用しないといけないときは?
ペース配分と換気量をしっかり考慮して行う必要があります。
看護師も交代しながら行うなどしないと、バッグを押しつぶすだけの動きであっても、かなり疲れるため人員交換しながら一定の寒気を継続させることが必要です。
アンビューバッグとジャクソンリースの違いは?
アンビューバッグ
・酸素源は不要で空気を送り込む
・酸素流量は0~10L/min
・バッグの拡張は自動
・CO2再呼吸はなく、高濃度の酸素吸入にはリザーバーを要し
・肺の状態把握や加圧圧力はわかりにくい
・構造は一方方向弁をもつ
・価格は高価
・機種により圧力計やPEEP弁が付いているものがある。
ジャクソンリース
アコマHPより
・酸素源が必要ですので場所や必要物品も多く必要です。
・酸素流量は分時換気量の2~3倍(10~15L/min以上)
・バッグの拡張はガス流入量に依存しないといけません。
・高濃度の酸素吸入は容易(ほぼ100%)で肺の状態把握や加圧圧力は感じ取りやすい。
・構造も単純で価格は安価
・こちらの使用はやや難しい場面が多いですが環境が整えばこちらがおすすめです。
(手術後、どうしても酸素がない場合、人口呼吸器のある ICUに戻るまでこのジャクソンリースで酸素を送りながら患者を移動する場面もあります。)
アンビューバッグその他MEMO
・アンビューバッグは慣れていないと突然使えるものではないので、慣れない看護師が使うことによって患者さんにはそれが伝わるものです。
ときどき使って慣れておくようにしましょう。
・アンビューバッグは意外に多くの空気を送り込むことができるものです。
空気の流量計などを用いて、500~600mlを送り込めるように感覚を掴んでおきましょう。
しっかり押すとバックの量である1200~1300mlは入るので、肺が破裂してしまう危険性があります。
・アンビューバッグの消毒は使う度に行う必要がありますが、そうするとバッグが長持ちしません。
そのため、昨今ではオートクレーブ滅菌に耐えうるバッグや、ディスポーザブルのバッグなども販売されています。
他に、マスクとアンビューバッグとの間にディスポのフィルターをつないでバッグの滅菌の回数を減らすことも可能です。