クロルヘキシジンとは?

クロルヘキシジンは低水準消毒薬といわれ、*抗菌スペクトルが狭く消毒の効果がある菌が特定されています。
(*抗菌スペクトルとは、どれだけその消毒薬が菌に対して消毒の効果があるかのこと)

消毒効果がある菌

・MRSAなどの一般細菌、カンジダなどの酵母様真菌含めた細菌に有効
・ヘルペスウイルスなどのエンベロープのあるウイルスのみに有効
・両性界面活性剤は結核菌にも有効。

微生物に有効

院内感染の原因菌のおおよそ90%は、これらの微生物です。そのため、低水準消毒薬は微生物に有効なため、無臭かつ安価であることもありよく使われます。病院などでも低水準消毒薬はよく使用されます。

経口毒性が低い

・経口毒性が低いため吸引の消毒にはクロルヘキシジンはおすすめ

アルコール過敏症にも使える

・なんといっても一番の魅力はアルコール禁止の患者にも使えることです!
・アルコールが使えない過敏症の患者にも理解してもらう

傷の消毒に使える!

0.05%クロルヘキシジン液が創傷部位の消毒に適しています。

結膜嚢などの粘膜に使える!

無色で0.02%クロルヘキシジン液は結膜嚢の消毒に適しています。
眼毒性しないため、消毒後2分間以内に洗い流す必要あります。
また、色付きのものではなく無色のクロルヘキシジンのほうがよいです。

カテーテルや手術にはアルコールが混ざると使える!

・0.5%クロルヘキシジン含有の消毒用エタノールがカテーテル刺入部位や手術野の消毒
・1%クロルヘキシジン含有の消毒用エタノールがカテーテル刺入部位の消毒に適しています
*アルコールの速効性と、クロルヘキシジンの持続効果があわさり消毒の効果はとてもいいです。

手指にも使える!

優れた消毒効果があり皮膚に吸着されやすいため持続効果あるので手指消毒に使えます!

日常に使えるクロルヘキシジン手指消毒薬

保湿剤を加えた0.2%クロルヘキシジン含有の消毒用エタノール液

手術前のクロルヘキシジン手指消毒薬

保湿剤を加えた0.5~1%クロルヘキシジン含有の消毒用エタノール液

クロルヘキシジン消毒の注意点

濃度によって消毒できる場所が違う

クロルヘキシジンの0.05%液は創傷部位の消毒に有用であるが、誤って0.5%液などを用いるとショックが発現しやすいです。

また、クロルヘキシジンの0.02%液が結膜嚢の消毒に用いられるが、0.1%液を超える濃度は角膜障害の原因になります。

微生物汚染を防止する

低水準消毒薬は、瓶などに作り置きしている消毒綿に手で触れるだけで汚染しやすく24時間以上経過でさらに汚染してしまいます。
①クロルヘキシジン消毒綿の作り置きについて
クロルヘキシジンを浸けて瓶などにカット綿を24時間以上いれて使用すると、細菌汚染します。汚染原因は、手で分割に使う際などです。
→そのため、24時間以上は使用しないで1日(24時間毎)ごとにつくるようにします。

*できれば、コスパはよくないですが単包装の滅菌済み0.05%クロルヘキシジン含まれた単包装の(ステリクロン0.05%)使用するとよいです。

②気管内吸引チューブ浸漬用消毒薬として使用
クロルヘキシジンを気管内吸引チューブはどうしても細菌汚染が生じやすいです。
低水準消毒薬中に痰などの汚れが混入すると、セパシア菌などが増殖

したがって、気管内吸引チューブの浸漬に、0.05%クロルヘキシジンの単剤を用いることは避けたい。8%エタノールを添加した0.1%塩化ベンザルコニウム液(ザルコニンA液0.1)などを用いる。

③0.5%のクロルヘキシジンアルコールを首から上の消毒に使わない
0.5%クロルヘキシジンアルコールは、濃度が高い薬含めクロルヘキシジン全般を首から上の術野消毒は使わないようにします。眼や耳へは強い毒性があります。

綿などに吸着してしまう

・クロルヘキシジンは綿などに吸着します。そのため、綿球や脱脂綿に浸した状態の場合は乾燥していないか注意します。
→クロルヘキシジンの成分だけ吸着され、消毒濃度が薄まってしまい消毒の効果がなくなる危険性があります!

*消毒用綿球に使用するクロルヘキシジンは綿球の倍量程度使用しひたひたくらいになるくらいがよい!

・高温に長時間避ける

・微生物汚染しやすいため、アルコールを加えるとよい。
ポビドンヨードやアルコールを含浸した綿球やガーゼが、使用中に微生物汚染を受ける可能性はない(ドロなどの混入による芽胞汚染を除く)。

・未開封ボトルは3年間安定、使用可能

希釈には精製水を使う

生理食塩水に含まれる陰イオンでは難溶性の塩を生成するので精製水を使います。

クロルヘキシジン注意点がある!?

①消毒濃度に注意
・創部に誤って、0.5%を用いると、ショックが生じる可能性があるため、「0.02%」を使用
・通常は、「0.05%」「0.02%」を使用
*アルコール(エタノール)では、原液100%より70%が消毒効果高いことは有名です。100%エタノールでは細胞膜の浸透効果が低いため菌の細胞の膜に浸透できず殺菌できないのです。70%エタノールでは浸透圧が高く、菌の細胞の膜を浸透し、膜の脂質をとかし、菌であるたんぱく質を変性させて殺菌します。
消毒剤は、この殺菌効果の高い濃度が希釈済み消毒液として商品化されています。あとは、消毒部位や消毒部位の程度で濃度を選びます。
②外陰・外性器の皮膚や結膜嚢への適用では、無色のクロルヘキシジン(ステリクロンW液 0.02%など)を用いる
③目や結膜嚢への適用後には、滅菌水で洗い流す④粘膜・膀胱・腟・耳へは禁忌

クロルヘキシジンは注意点・規制があるのはなぜか?

・過去にアナフィラキシーショックを起こした事例があるからです。
・日本においては1980年代に膀胱・腟・口腔などの粘膜や創傷部位に使用してアナフィラキシーショック(急激な血圧低下、呼吸困難、全身発赤等)が発現したとの報告が十数症例報告され
・そのため、日本では 口腔以外の粘膜 への使用は 禁忌 となっています。
しかし、アメリカ では粘膜に使用される 消毒薬 としては第一選択薬となっています。0. 12~ 0.2%程度の濃度での使用で効果があるとされています。
・高濃度(0.5%以上)のクロルヘキシジンが眼に混入すると角膜障害を起こすため、結膜のうに使用する場合には0.05%以下で界面活性剤を含有しない製剤を使用します。中枢神経、聴覚神経への適用は障害を引き起こすため禁忌となっています
ショック例のほとんどは適正濃度を超えた0.2~1%での使用によるもの
・近年は適正濃度におけるアナフィラキシーショックも報告されています。これらの報告は、消毒部位を完全に乾燥させずにカテーテルを挿入したため血管内に直接クロルヘキシジンが混入したと思われる症例や創部の小血管から経静脈的に体内に混入したと思われる症例です。それは、消毒した箇所を完全に乾燥し血管内に液が混入しないよう注意が必要です。
*感染対策情報レター グルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードの副作用についてより引用

各消毒薬の平均乾燥時間


1%クロルヘキシジンエタノール液、10%ポビドンヨード水溶液、また0.1%クロルヘキシジン水溶液を12mm サイズの綿棒に十分に含浸させ、被験者の前腕屈側部(約 5×8cm)にそれぞれ2回塗布し、塗布中央部が完全に乾燥するまでの時間を測定結果が以下となっています。

  • 1%クロルヘキシジンエタノール液では 41秒
  • 0.1%クロルヘキシジン水溶液では 2分22秒
  • 10%ポビドンヨード水溶液では 5分

この結果から、1%クロルヘキシジンエタノール液は速乾性があることがわかりますね。
吉田製薬の社内資料より
「1%クロルヘキシジンエタノール液の皮膚塗布後の乾燥時間」

クロルヘキシジン消毒液の種類

市販のクロルヘキシジン消毒液

医療用のクロルヘキシジン消毒液


・マスキン水(クロルヘキシジングルコン酸塩消毒液 0.02, 0.05, 0.1, 0.5%)
マスキンの由来 「キン(菌)をマスク(mask:隠す)する」から「マスキン」。「水」で希釈した消毒液だから「マスキン水」。
丸石製薬株式会社MASKIN

・ヘキザック水W( 0.02, 0.05, 0.1, 0.5%)
主成分であるクロルヘキシジングルコン酸塩のヘキシジンからとって「ヘキザック」という名になってます。
吉田製薬株式会社
heizac5 hekizac2
・グルコジンW水
・グルコジンB
・グルコジンR水
主成分であるクロルヘキシジングルコン酸塩のヘキシジンからとって「グルコジン」という名になってます。
・グルコジンR水( 0.05, 0.1, 0.5%)
無色澄明のグルコジン W・エタノール液 0.5%の他に、院内における誤用防止
に有効なグルコジン B・エタノール液 0.5%(青紫色澄明)およびグルコジン R・
エタノール液 0.5%(赤色澄明)があり、用途に合わせて選択できる。
「グルコジン」は「グルコン酸クロルヘキシジン」の「グルコ」と「ジン」の
合成語、「W」は White(無色)、「B」は Blue(青色)、「R」は Red(赤色)、
「エタノール液」は添加物としてエタノールを含有した液剤、「0.5%」は有効
成分の濃度を意味する。
日医工株式会社

ヤクハン製薬株式会社

guruko2

gurukozin

*1 Mimoz O, Karim A, Mercat A, et al.:Chlorhexidine compared with povidone-iodine as skin preparation before blood culture a randomized, controlled trial. Ann Intern Med 1999;131:834-837.

*2 Suwanpimolkul G, Pongkumpai M, Suankratay C:A randomized trial of 2% chlorhexidine tincture compared with 10% aqueous povidone-iodine for venipuncture site disinfection:Effects on blood culture contamination rates. J Infect 2008;56:354-359.