インフルエンザA型とインフルエンザB型の違い

冬になると猛威をふるうインフルエンザとは?いったいどんなウイルスなんでしょうか。
インフルエンザにはそもそも3種類あります。ウイルスのタンパク質の違いによって、①インフルエンザA型、②インフルエンザB型、③インフルエンザC型と分かれています。特にA型とB型は、赤血球凝集素やノイラミニダーゼと言った構造の違いで、さらに細かい種類(亜型)に分かれています。最も流行するのがA型で、その次がB型です。C型は他の2つとは性状が違うので、症状も軽くほとんど流行しません。ここでは、A型とB型の違いについてご紹介します。
2つの型の違いは、変異と感染の仕方にあります。

①ウイルスの変異

インフルエンザウイルスは、変異といって遺伝子の構造が変わる性質を持っており、流行の原因になっています。一部だけの変異であればそれほど影響がありませんが、新たな亜型が出来てしまうほどの変異では、ワクチンが効かず大流行を引き起こしてしまいます。このような新たな亜型のことを新型インフルエンザと呼び、A型インフルエンザウイルスで見られる変異です。
メディアでも話題になった鳥インフルエンザは。大きな変異を引き起こすインフルエンザA型で、危険性の高い2類感染症に分類されています。

②感染媒体

大流行を引き起こすインフルエンザA型に比べ、B型はヒトからヒトのみの感染で流行します。このため大きな変異が起こりにくく、小流行で収まります。

インフルエンザの薬の作用

インフルエンザの治療には、内服薬のタミフルや吸入薬のリレンザが有名ですね。他にも抗インフルエンザ薬としてイナビル(吸入薬)やラピアクタ(点滴薬)、新薬のアビガンがあります。アビガンを除く従来の抗インフルエンザ薬は、ウイルスを増殖させるものではないことが特徴です。ウイルスそのものの増殖を抑えるのではなく、ノイラミニダーゼという酵素を阻害する役割を持っています。ここで、ノイラミニダーゼとは、増殖したインフルエンザウイルス遺伝子が細胞の外に出て行くのを助けている酵素です。この酵素を邪魔することで、インフルエンザウイルスが増殖しても悪さができないような仕組みになっています。
ここで重要になるのは、薬を飲むタイミングです。インフルエンザウイルスは、感染から8時間後には100個、16時間後には1万個、そして24時間後には100万個まで増えます。あまりにウイルスが多くなると薬が効きにくくなるので、早期診断、早期治療が重要になります。また、インフルエンザウイルスは気道で感染し、増殖を繰り返すのでリレンザやイナビルのような吸入薬が有効です。

イナビルの効果がでるまでの時間、効き方

イナビルとは、長時間効用のある吸入型の抗インフルエンザ薬です。容器の中に20mgの粉末が入っています。効き方は吸入から4時間ほどで最大濃度となり、他の抗インフルエンザ薬と違って長時間作用するので、1回の吸入で治療が終わります。また、副作用が少ないのが特徴です。なぜなら、吸入薬で気道に直接作用するため、他の組織・臓器への影響が少ないからです。
このようにメリットの多いイナビルですが、錠剤に比べると服用が難しいというデメリットがあります。このため、5歳未満の小さい子どもには向いていません。しかし、半分以上吸入できれば効果が十分とされており、薬剤師の指導のもと服用を行えばあまり神経質にならなくても良いようです。他に、呼吸器疾患や乳製品のアレルギー患者では注意が必要です。
イナビルは1容器20mgで、用法は治療と予防の2種類に分かれています。
①治療で使用する場合
・10歳以上では40mgを一回服用
・10歳未満では20mgを一回服用
②予防で使用する場合
・10歳以上では40mgを一回服用、または20mgを2回服用
・10歳未満では20mgを一回服用

タミフルの効果がでるまでの時間、効き方

タミフルとは、内服薬として最も有名な抗インフルエンザ薬ですが、具体的にどのように作用するのでしょうか?
タミフルの用法は、カプセルを1回1錠を1日に2回(5日間)となっています。予防の場合は1日1回(10日間)の服用を行います。吸入が必要なリレンザやイナビルに比べて、簡単に服用することができます。しかし、2005年にタミフルを服用した子どもが異常行動が起こしたとして問題となりました。現在では他の抗インフルエンザ薬でも異常行動が確認され、タミフルとの明確な因果関係は不明ですが、「10代の患者には使用を差し控えること」とされています。
タミフルの作用は、増殖したウイルスが細胞外で悪さをするのを防ぐことです。効き方は短期的で、内服から4時間ほどで血中濃度が最大となります。また吸入薬とは違い全身に作用するため、下痢や嘔吐などの副作用が比較的多くなっています。特に腎機能が低下した患者では注意が必要です。
服用後の異常行動に関する報道により、タミフルに不安を持つ方も多いようですが、副作用発生率は約2%で、他の薬剤と比べても特別高いわけでありません。

リレンザの効果がでるまでの時間、効き方

リレンザとは、イナビルと同様の粉末状の吸入薬です。形状はイナビルと異なり、円盤型のアルミシートに4つのブリスターが付いており、ブリスター1つにつき5mgの粉末が入っています。吸入から約1.5時間で血中濃度が最大になり、2日ほど発熱が続きます。
〈イナビルとの共通点〉
・気道への直接的な作用で副作用が少ない点
・吸入が難しい5歳未満の子どもには処方されない
・呼吸器疾患や乳製品のアレルギー患者では注意が必要
〈イナビルとの違い〉
・効き方は、作用時間が短く長く服用する必要がある
・長く服用しなければならず、飲み忘れなどのデメリットがある
〈リレンザの用法〉
用法は大人も子供も同じです。
・治療の場合、ブリスター2つを1回とし、1日2回服用(5日間)
・予防の場合、ブリスター2つを1回とし、1日1回服用(10日間)
リレンザは粉末の入ったアルミシートを専用の吸入器にセットし、水平の状態でブリスターに穴を開け、今度は垂直にして粉末を吸入します。1回の服用でこの作業を2回行わなければなりません。この点ではイナビルよりも服用が難しいでしょう。また湿気に弱い薬なので、管理の際注意が必要です。

アビガンの効果がでるまでの時間、効き方

アビガンとは、2014年に承認された新薬です。従来のイナビル、タミフル、リレンザ、ラピアクタは全てノイラミニダーゼ阻害剤であり、インフルエンザウイルスの増殖を抑えるものではありませんでした。対してアビガンの効き方は、遺伝子の複製に関与する「RNA依存性RNAポリメラーゼ」を阻害する薬です。つまり、ウイルス感染した細胞に入り込んで、インフルエンザウイルスの増殖そのものを抑えることができます。しかし、アビガンの重要な副作用として妊婦が服用すると胎児奇形の恐れがあり、現時点では「緊急事態のみ」の限定的な使用になっています。このため、タミフルなど従来の抗インフルエンザ薬などが効かない場合の備蓄薬として製造されています。
アビガンの服用は5日間で、用法は日数によって変わります。15歳以上の成人では、次のように用量が定められています。
・1日目は1回1600mg(8錠)を2回服用
・2日目から5日間は、1回600mg(3錠)を2回服用
アビガンは、統計的に他の抗インフルエンザ薬と同等の効果が得られますが、内服薬のタミフルと比べると用量が多くなっています。

インフルエンザ薬と解熱剤は併用してよいのか?

抗インフルエンザ薬は、ウイルスそのものを退治するのではなく、増殖を抑えたり、細胞外で悪さができないようにする役割があります。ですから、薬の力に頼りながら、自分自身の免疫力でウイルスと戦わなければなりません。
私たちの身体の中では熱を上げることで
・熱に弱いインフルエンザウイルスの増殖を抑える
・白血球のはたらきを高める
・安静にする
などの効果により、免疫力を上げています。このように、インフルエンザの感染では発熱は重要な役割を担っていますが、場合によっては解熱剤が処方されることもあります。
しかし、インフルエンザ薬と解熱剤の併用で注意しなければならない場合があります。それは、インフルエンザ脳症です。インフルエンザ脳症とは、インフルエンザの合併症の一つで、子どもに多く起こります。特に脳浮腫や肝障害が起こるインフルエンザ脳症をライ症候群と呼び、予後不良の重篤な合併症です。ライ症候群の原因にはアスピリンという解熱剤が知られています。子どもでも使える比較的安全なインフルエンザ薬と併用してよく使われる解熱剤として、カロナールがあります。