精神科には様々な病気を持った患者さんがたくさん訪れます。その中でも薬薬物療法やリハビリなどを行っても在宅生活が難しい患者さんは入院することになります。患者さんによって対応の仕方は様々で、看護師も常に勉強しコミュニケーション能力や技術を磨く必要があるのです。実際に起きた事例によって看護師の対応の仕方の違いをみてみましょう。

①40代男性 統合失調症にて入退院を繰り返している。破瓜型といわれるもので、発症は21歳。内服薬と注射にて薬剤投与をおこなっているも、誇大妄想が強い患者。

この場合は自分が神様だと思い込んでおり、全てが自分の思い通りだと思っている為、看護師は威厳を持って接しないと、笑顔を見せるだけで自分に気があると思い、性的な逸脱行為を行なってしまう可能性があります。その為、女性看護師はやや強めの言動にてトイレや入浴誘導、配薬をおこないます。実際に付きまとわれたり、襲われた女性看護師はたくさんいます。

②60代女性、うつ病にて自殺願望強い。実際に今までに2度自殺未遂をしている。内服薬にて加療中。症状には波があり、酷い時には無為状態となり、全介助となる。

この場合は看護師は励ます言葉は決してかけてはいけません。余計に患者さん本人を追い込んでしまうのです。また、食事や睡眠の確認もしなくてはいけません。ちゃんと生活しているように見え、隠れて食事を捨てていたり、誰かにあげたり、寝たふりしていることもあるのです。無為状態では生活全般において全般的な介助を要するので、褥瘡にも気をつけなきゃいけません。
また一番怖いのが、うつ症状が落ち着いた頃です。今までもややうつが落ち着くと笑顔がみられ帰宅願望まで聞かれるのですが、と同時に自殺する元気まで出てしまうといったところでしょうか。外出や外泊に関してもきちんと先生と確認の上に許可しないと、外に出ると環境の変化により、自殺願望を引き起こしかねないのです。

③70代男性。重度アルツハイマー型認知症。異食行動があり、常に目に付いたものは口に入れる。

この場合は、環境整備に心がけて看護することが大切です。ティッシュや石鹸、とろみ材など、目につかないように片付ける必要があります。

それぞれの看護の仕方がより、患者にとって安全で快適な入院生活を左右するのです。

幻覚、妄想に対する看護

精神科看護は非常に再発リスクが高い科である。内服治療が主であるが、服薬していることで落ち着いているという自覚に乏しく退院後に内服治療を自己中断しそれによって症状が再燃、入院の経緯になることが非常に多い。それらの症状は主に幻覚や妄想という陽性症状である。陽性症状に対する看護師の看護というのは主にコミュニケーションである。
 話を聞いてあげるというのが主に精神科看護のコミュニケーションとみんな思っている部分、勿論話を聞くことで色々なことをアセスメントする。どういったことが患者様の問題か、どんなことに悩んでいるのかなど。では私たちに感じることのできない妄想、幻覚に対してはどうか。こちらが感じたことのない症状に対して話を聞く、ではその症状に対して共感はできるのか。それは無理だろう、未体験の話をあたかも感じたことのあるように話を聞くことはできない、聞くふりはできるかもしれない、でもそれは嘘の看護になるだろう。ではそういった場合どうするのか、一般的に教科書に書いている内容は否定も肯定もできないというもの。ではそういった症状を否定も肯定もしないとどうなるだろ。イメージだがそれは無視するような、相槌をうつだけの対応になりはしないだろうか。患者によってはこちらでは感じてはいないことを感じていると指摘するのも有用である、現実に引き戻すように働きかけることも必要であるからである。ただ、超急性期で錯乱している場合はこちらの意見に耳をうまく傾けられる患者様はいない。自分で起きている症状を正当化するような発言が聞かれることがしばしばある。では、このような人たちにどういった看護を提供するか。私はこちらが体験することのできないこれらの恐怖体験をしている患者の辛さをいたわることにしている。こちらは感じることはできないが辛いんだなぁと解ってあげることはできる。
 こういったやり取りによって関係づくりをはかっていく。突然知らない人と色々話すというのは精神科疾患を患っている人以外でも気を使う物、それは疾患を患っている人はなおさら大変だという認識がある。辛さを少しでも緩和できるように、また陽性症状があった際にどのように対応していくのかをアドバイスしていくことで社会復帰を促していく看護が必要である。