セプラフィルムとは?
合成吸収性癒着防止剤とよばれるもので主に外科手術の際に癒着防止のために使用されるものです。
術後の癒着の軽減で腹部や骨盤腔の手術、腹部切開創下、腹膜損傷部位、子宮関連の手術などで使用されます。
このセプラフィルムは
・ヒアルロン酸ナトリウム
・カルボキシルメチルセルロース
からなる白いシートのようなフィルム状の吸収性癒着防止剤で1997年に使用の承認がされました。
セプラフィルムの使用方法
腹部または骨盤腔の手術が終了し、腹部又は骨盤腔を閉じる直前に癒着しやすい部位に貼付します。術者が、縫合開始前に「セプラフィルム出して」などといいますが手術によっては大抵使うことが決まっている場合は準備しておくとよいでしょう。
セプラフィルムは、必要に部位を十分を覆えるように適切な大きさにカットし、使用前乾いた状態にし生食などで濡れないようにします。また、濡らしてしまうと組織にしっかり付着できなくなるため濡らした状態での使用は避けます。
セプラフィルムの効果と目的は?
・セプラフィルムは、手術などで損傷した組織と周囲の組織を物理的にセプラフィルムを間に挟むことにより隔離し癒着軽減させます。
・セプラフィルムは、組織に付着後24〜48時間以内で水和したゲル状となり、癒着しやすいこの7日間に貼付した組織に留まり、腹骨盤腔から吸収され、28日以内に腎臓より体外へ排出されます。
・セプラフィルムは、強い組織付着力があるため縫合・固定しなくてもよく癒着させたくない部位に対して貼付するだけでよいです。
・セプラフィルムを貼付する部位は血液があっても構いません。そのため出血のある結腸切除や筋腫核出などの腹骨盤腔外科手術においても、使用できます。
術後癒着はどのくらいで発生するの?
腹部切開手術を受けた患者の93%に、癒着が起きるとの報告がありかなり高頻度の確率です。
例
・初回帝王切開手術の46~65%
・婦人科開腹手術の55~100%
で癒着が起きるというデータがあります。
*術後癒着で何が怖いかというとそれに伴う合併症です。
・小腸閉塞の75%
・不妊症の15-20%
・慢性骨盤痛の48%
が、術後癒着による合併症になり問題となっています。
セプラフィルムの保管と使用期限について
貯蔵・保管方法:室温保存
使用期限:3年
臨床成績 開腹創直下の術後癒着
潰瘍性大腸炎または家族性大腸ポリポーシスの患者で、大腸全摘術(回腸嚢肛門吻合)+回腸人工肛門造設術が施行された183例を対象とし、開腹創直下にセプラフィルムを貼付し、術後8~12週の人工肛門閉鎖術時に、腹腔鏡による観察で、開腹創直下の術後癒着を評価した。
項目 | セプラフィルム群 (n=85注1)) |
対 照 群 (n=90注1)) |
p値 | |
発 生 | 癒着なし 癒着あり |
43(51%) 42(49%) |
5(6%) 85(94%) |
p<0.0001注4) |
程 度注2) | 癒着なし グレード1 グレード2 グレード3 |
43(51%) 12(14%) 17(20%) 13(15%) |
5(6%) 4(4%) 29(32%) 52(58%) |
p<0.0001注5) |
範 囲注3) | 23±34% | 63±34% | p<0.0001注6) |
注1)有効性評価可能症例は、183例中、セプラフィルム群が85例、対照群が90例であった。
注2)癒着の程度:
グレード1(膜状癒着、血管新生がない)
グレード2(中等度の厚さの癒着、部分的に血管新生を認める)
グレード3(密着した癒着、著明な血管新生を認める)
注3)癒着の範囲(正中切開部のうち癒着の長さの割合):
癒着の部分の長さ(cm)/正中切開部の長さ(cm)(%)
注4)Fisherの直接法
注5)Wilcoxonの順位和検定
注6)t検定
臨床成績 子宮表面の術後癒着
子宮筋腫摘出術患者127例を対象とし、子宮前壁及び子宮後壁表面にセプラフィルムを貼付し、術後平均23日目の腹腔鏡による観察で術後癒着を評価した。
項目/群 | セプラフィルム群 | 対照群 | p値注 |
---|---|---|---|
癒着付着部位数注2) | 4.98 | 7.88 | p<0.0001 |
程 度注3) | 1.94 | 2.43 | p<0.01 |
範 囲注4) | 1.23 | 1.68 | p<0.01 |
面 積注5) | 13.23 | 18.72 | p<0.02 |
注1)有効性評価可能症例は、127例中、セプラフィルム群が54例、対照群が65例であった。但し、癒着付着部位数については、セプラフィルム群が49例、対照群が48例であった。
注2)癒着付着部位数(平均値):子宮前後壁両側への癒着の総数
注3)癒着の程度(平均値):0(癒着なし)、1(膜状で血管新生がない)、2(部分的に血管新生を認める)、3(密着した癒着)
注4)癒着の範囲(切開部全長またはその全体面積に対する癒着の割合%)(平均値):0(癒着なし)、1(切開の全長または当該箇所の全面積の25%以下を覆っている)、2(同じく26~50%)、3(同じく51%以上)
注5)癒着の面積(平均値):cm2
注6)t検定