全身清拭の目的とは?

清拭は入浴よりもはるかに体力の消耗が少ないので、身体的な障害がある場合や病気やけがのために入浴やシャワー浴ができない場合には、お湯やせっけんを使って身体の皮膚を拭いて清潔を保ち、入浴と同じようにさっぱりとしたと感じられるようにします。
温かいタオルで清拭を行うことによって、マッサージ効果や温熱効果が得られ血管を刺激するという効果があります。血管が刺激され、身体が温まると血液の循環がよくなります。  また清拭時は、清拭をする人とされる人がコミュニケーションをとる良い機会となります
。行き届いた清拭は、清拭をする人の温かさが清拭をされる人に伝わり、言葉以外でのコミュニケーション手段になります。
清拭後は笑顔になり、表情もイキイキとしていきます。
また清拭は全身の観察をすることができる機会です。皮膚の状態を観察して、異常がないか確認します。
皮膚が赤くなっている、皮がめくれているなどの褥瘡の可能性ある場合の早期発見に役立ちます。加えて四肢の関節の動きに変化はないか、筋肉の状態はどうかなどを把握することもできます。また身体状況のみならず心の状態を観察する機会にもなります。
 清潔を保つことは健やかに生活をするためのQOLの低下を防ぐことにもつながります。

全身清拭の手順

事前準備

1、清拭の手順を説明して同意を得る
2、バイタルを測定して顔色や気分を確認する
3、排泄の有無を確認する
4、必要物品を並べる
5、室内温度を調整して、プライバシー保護のためカーテンやスクリーンをする

清拭の手順

1、顔から耳の清拭
 目      目頭から眼尻にかけて拭き、もう片方はタオルの面を変えて拭く
 額と鼻と頬  額は中心から外側にむけて拭く
        耳は指にタオルを巻き付け、耳介と耳穴を拭く
        原則としてせっけんは使わない
2、上肢の清拭   
        濡れタオルを絞りせっけんをつけて拭く
        すすぎ用にもう一枚の濡れタオルを絞り、せっけんをふきとる
        拭く順番は①手②前腕③肘④上腕⑤わきの下⑥肩
3、胸部の清拭
        首の付け根から胸の外側を拭く
        女性は、乳房の形に沿って円を描くように拭く
4、腹部の清拭
        腸を考慮して「の」の字を書くようにして拭く
5、下肢の清拭
        あとから拭く部分にバスタオルなどをかけておく
        拭く順番は①足②下腿前面③下腿後面④大腿
6、背部の清拭
        さするようにマッサージを行い血行を促す
7、臀部の清拭 
        臀部から脊柱に沿って肩のほうへ、上に向けた力で拭く
        臀部が汚れている場合は、濡れタオルを取り換えて拭く

全身清拭の準備物

1、洗面器 洗面器はせっけんを使うときに用いるものと、せっけん水をふき取るためのものと2つあると便利です。
2、お湯を入れるバケツ 汚水用バケツ 新聞紙などを下に敷いておきます。
3、ペットボトル ぬるま湯をいれて、陰部洗浄に使います。
4、タオル バスタオル、ハンドタオル、下用タオル、ガーゼなど 
タオルは肌触りの良いものを使います。ハンドタオルは洗い用、バスタオルは身体を覆ったり水分をふき取ったりするために使います。また体を露出することは自尊心を傷つけることになったり、体温を下げる原因となります。そのため清拭をする部分だけを露出して、それ以外の場所はバスタオルで覆います。
5、せっけん 清拭剤 かゆみのある人はせっけんで皮脂を取りすぎるとかゆみが悪化する可能性があるので、汚れがひどい陰部や肛門だけに使ったり、皮膚を保護する清拭剤を利用します。顔や耳は原則としてせっけんは使いません。
6、防水シーツ 陰部洗浄のとき臀部の下に敷きます。
7、保湿クリーム 
8、着替え
9、手袋、エプロン 
10、50℃~55℃のお湯 8リットルくらい準備します。
11、水 ペットボトルに入れ、お湯に足して温度を調節します。
12、湯温計

全身清拭の注意点と観察ポイント

注意点
身体の状況によっては、一度に全身を拭く事が負担になる場合もあるので、状態に応じて最も必要な部分のみを行い部分清拭をする。
循環器系、呼吸器系の疾患を持つ人の注意事項を確認しておく。
満腹時や空腹時を避けるため、食前食後の一時間以内の清拭は控える。
冬は風邪をひきやすいので、体温保持のために、できれば日中の暖かい時間帯に行う。
脱衣時に寒さを感じないように室内の温度に気を配る。
遠慮や羞恥心から清拭を拒否される人の場合は、時間をおいて再度清拭を促す。
羞恥心を軽減するため清拭する部分のみを露出させ、それ以外はバスタオルなどで覆う。
濡れタオルの温度は冷たくないように確認する。
手早く、静かに、手先・足先から心臓へ向けて平均した力でリズミカルに拭く。
せっけんはよく泡立てて、十分にふき取る。
体温が奪われないように水分を残さないように素早く行う。
清拭後の顔色や表情の変化など体調確認をする。
清拭時はコミュニケーションを図り、清拭される人にとって気持ちの良いものになるように心がける。

観察ポイント

皮膚が薄くなっていないか
弾力性はあるか
乾燥していないか
色素沈着はないか
皮膚の感覚は低下していないか
擦り傷などの傷はないか
湿疹やかぶれなどはないか
褥瘡はないか
手足に浮腫はないか
爪に変化がおこっていないか
関節の拘縮・変形、関節可動域に変化はないか
痛みがないか あればその部位、程度をみる
体調(睡眠、病気、バイタル)はどうか
いつもとの状態の変化(元気がないなど)はないか
排泄の状況 排泄の有無、排泄時間、下痢、便秘、カテーテル使用、ストーマの有無
清拭に対する思い 嬉しい、苦痛、羞恥心、遠慮などをくみとる
栄養状態に変化はないか

全身清拭の看護計画

1、清拭前の身体の状態や精神状態の確認をする
マヒの有無と程度、関節の拘縮の状態をみる
乾燥、湿疹、褥瘡、水虫、紫斑、発疹、発赤などがないか皮膚の状態をみる
認知機能の状態はどうか観察する
2、ADLの状態の確認をする
移動が行えるか、またどのような方法を取れば移動ができるかを確認する
食事、水分の摂取状況を確認する(満腹、空腹、水分摂取の時間など)
排泄があったか、何時にあったか、下痢や便秘はないか、ストーマを使用しているかどうか
3、環境の状況
居室の温度は適温かどうかを確認する
必要な設備や物品が整っているか、湯の温度は適当かどうかを確認する
プライバシーの保護ができているか、状況に合わせた適切な清拭がどうか、要望の汲み取りができているかどうかを確認する
4、本人の意向
清拭時間、清拭に対する思いをくみ取っているか
5、動作と環境
清拭の体位の安全は確保されているかを確認する
清拭の際の姿勢は安定しているか、清拭用具の活用が適切にされているか、正しい方法で清拭がされているかを確認する
清拭の時間とお湯の温度は適切かどうかを確認する
痛い、辛い、苦しいなどの表情がないかどうか観察する
6、全身の状態
皮膚の色、背部や臀部などの圧迫部位の発赤の有無、皮膚の状態、発汗の様子はどうか
陰部、肛門部の汚れやかぶれが無いかどうか
四肢の関節の動きや筋肉の状態を把握する
7、疲労など心身に異常はないかの確認 体調の変化はないかの確認