耳下腺術とはどのようなものがあるか?
耳下腺とはおたふく風邪で腫れる唾液を作る臓器の一つで、左右の耳の前方にあります。耳下腺内には顔面神経が走っていて、顔面神経の外側を浅葉、内側を深葉に分けられる。
腫瘍の摘出術は3つ
1.核手術
2.耳下腺部分切除術
3.耳下腺浅葉切除術
耳下腺腫瘍(耳下腺癌や良性腫瘍)は唾液腺により発生する中で最も多い。
下腺がんの多くは浅葉に存在し、手術法としては耳下腺浅葉切除が行われる。
顔面神経は切らずに保存して、それより表層の耳下腺浅葉と共にがんを摘出することが理想である。
しかし、顔面神経の一部を切断せざるを得ない場合は、がんが耳下腺全体にひろがっている場合には、顔面神経ごと耳下腺を全摘する。
切断した顔面神経は、神経移植や頸部の神経を利用して再建することもある。
耳下腺術後ドレーン挿入の目的
·皮下·創部血腫の予防
・唾液漏の早朋発見
唾液瘻(だえきろう)とは?
耳下腺の切断面から唾液が口腔内外などの周囲に漏れ出てしまうことをさす。
耳下腺術後ドレーン挿入の適応
・創部の血栓が形成の予防
顔面神経は耳下腺を貫通しており,通常の
手術では神経を同定し,腫瘍から剥離操作
を行っている,創部の血腫は圧迫による顔
面神経麻痺の原因となりえる
・血腫による感染の予防
血腫は創感染をひきおこしやすく,予防的にドレーンを挿入する
・唾液漏の情報をえるためのドレーン(インフォメーションドレーン)
ドレーンの種類
・陰圧かけて持続吸引されるバックを用いる閉鎖式ドレーン
(SBバック、リリアバック、J-Vacなど)
・ドレーン先端が滅菌バックに連結されているため外気にふれずに感染しにくい構造である
・ガーゼ交換時には、挿入部の状態やドレーンがぬけていないか、バックの貯留量や色を確認する
・患者の体位変換時や移動時はドレーンを抜去しないように注意する
・ドレーンの自己抜去に注意する
*以前はペンローズドレーンなど開放式ドレーンが用いれたが,逆行性感
染の可能性があるため,近年では閉鎖式ドレーンを用いられる。
耳下腺術後ドレーンの挿入位置とその経路
・主に組織欠損が大きい耳下部に留置
・皮膚からの挿入部は,耳下部後方の毛髪の生え際あたりとすることが多い,
通常はドレーンは1本の留置である。
耳下腺術後ドレーン固定方法
·皮膚に絹糸など糸で固定する
耳下腺術後ドレーン挿入の予想される合併症
・ドレーン閉塞による合併症(血腫,リンバ漏、唾液漏など)
・ドレーンからの逆行性感染
・手術による合併症
耳下腺術後ドレーン挿入の排液の性状
・排液の性状は挿入初期は血性であるが、淡血性→漿液性と変化する。
・リンバ漏の排液の色は、淡黄色
・乳び漏の排液の色は、白色懸濁性(はくしょくけんだくせい)
·唾液漏は淡黄色から無色となる。
耳下腺術後ドレーン挿入の抜去時期
・血腫形状がないこと、リンパ漏や唾液漏(だえきろう)がなければ抜去する
*唾液漏とは?
唾液腺の切除後,腺組織から創部に唾液が漏出する液のこと。
・24時間後で、血性から淡血性へとなり排液量が30ml以下であれば抜去可能である(近年、ドレーンの留置期間は短くすることで感染のリスクも高まり、予後もかわらないという報告があるため早期抜去の傾向がある)
·切除範囲や排液の性状などにもよるが、通常術後2、3日で抜去できることが多い
耳下腺術後ドレーン挿入の看護のポイント
・吸引バックやドレーンが引っ張られてドレーンが抜けてしまうため、誤抜去に注意する
・ドレーンバックは首から提げられるような袋に入れて,身体から離れないようにする(チユープの側孔が体外に出ると陰圧を維持できなくなる)
・陰圧の強さは担当医に確認し、その陰圧が保持されているかを確認する
·縫合不全,ドレーン挿入部の創部離開,ドレーンの抜去などによって創内の
陰圧が保持されなくなるため排液がみれらなくなる。その場合は,血腫や二次感染がおきやすいのですぐに医師に報告する。
·ドレーン腔内の血液の凝固により,ドレーンが閉塞し排液困難になるため適宜観察をおこなう。
·排液が急に減少した、もしくは排液が少ない場合は,ドレーン閉塞を疑い創部の腫脹がないかどうかを確認する
·排液が急に減少した場合は,創部の腫脹がないかどうかを観察する。ドレーン閉塞の場合は排液はないが血腫となる場合があるので注意が必要である。
唾液漏になった場合
・排液が淡黄色で,術後数日過ぎても減少しない場合は唾液漏が考えられる,
このような場合は,担当医に報告し創部を圧迫して様子をみて状況に応じ絶食にする必要がある場合がある
・唾液漏の状態が怪度の場合は,圧迫によりで症状がよくなることが多いが、よくならず再手術が必要となることもあるため早期発見が重要である
リンパ漏になった場合
・悪性腫瘍では広範囲のリンパ節の切除(リンパ郭清)を行うことも多い。通常でもリンパ液が術後4-5日は排液される。しかし、頚部の血管付近には太いリンパ管があり損傷し術後にリンパ液の漏れを起こした場合は1日500ml以上排液される。これがリンパ漏である
・ドレーンからの排液が淡黄色で術後数日過ぎても減少しない場合は,リンパ漏が考えられる。
·リンパ漏の状態が軽度の場合は,貯留液を十分吸引し、「ドレーンを抜去」し、穿刺吸引と「圧迫」することで症状の改善がみられる場合も多い。しかし、再手術(損傷されたリンパ管を閉鎖するリンパ痙閉鎖術)や薬液注入療法になる場合もある。