ドレーン挿入の目的
・縫合不全の早期発見
·皮下·創部血腫の予防
·リンバ漏,乳び漏の早期発見
ドレーン挿入の適応
・咽頭がんに対する手術では
喉頭全摘術
喉頭部分切除術
頭頸部の再建術
(下咽頭喉頭頸部食道摘出手術)
(下咽頭部分切除術)
(中咽頭の切除術)
が行われるが、その際に挿入される。
*()では挿入されることはあまりみられない。
*喉頭癌の進行がんの多くの場合は喉頭全摘術である。
・頚部のリンパ郭清を同時に行った術後は、リンパ漏(りんぱろう)や乳び漏(にゅうびろう)が合併症としておこりやすいため、排液により情報をえるためのインフォメーションドレーンとして挿入される
·血腫は、貯留したままでは感染しやすく縫合不全など重篤な合併症の引き金となりえるので通常挿入する
ドレーンの種類
陰圧かけて持続吸引されるバックを用いる閉鎖式ドレーン
(SBバック、リリアバック、J-Vacなど)
・ドレーン先端が滅菌バックに連結されているため外気にふれずに感染しにくい構造である
・ガーゼ交換時には、挿入部の状態やドレーンがぬけていないか、バックの貯留量や色を確認する
・患者の体位変換時や移動時はドレーンを抜去しないように注意する
・ドレーンの自己抜去に注意する
*以前はペンローズドレーンなど開放式ドレーンが用いれたが,逆行性感
染の可能性があるため,近年では閉鎖式ドレーンを用いられる。
*上咽頭切除では口腔内からドレーンを挿入することもある
挿入部と経路
・胸骨上部から上頸部にかけてドレーンの側溝部を留置する
・皮膚の挿入部(皮膚からドレーンがでてるところ)は耳下部から下方向に向ける場合と鎖骨近傍から上方に向けて挿入する場合がある,
・両側に各1本挿入,頤(オトガイ)下にも1本留置することが多い,通常は3本
のドレーンを留置することが多い,
*オトガイとは、下顎の先端あたり下顎をさす。オトガイ下は、顎先端から咽頭隆起(舌骨あたりまで)の範囲である
·誤瞭防止の手術としての単純喉頭全摘出術の場合,正中に1本留置するのみ留置する場合もある
固定方法
·皮膚に絹糸などで固定糸をかける
予想される合併症
·ドレーン閉塞による合併症(血腫,リンバ漏など)
·ドレーンからの逆行性感染
・手術による合併症
抜去時期
・血腫形状がないこと、リンパ漏や乳び漏、多量出血がなければ抜去する
・24時間後で、血性から淡血性へとなり排液量が30ml以下であれば抜去可能である(近年、ドレーンの留置期間は短くすることで感染のリスクも高まり、予後もかわらないという報告があるため早期抜去の傾向がある)
·切除範囲や排液の性状などにもよるが、通常術後3~5日までには抜去できることが多い
排液の性状
・排液の性状は挿入初期は血性であるが、淡血性→漿液性と変化する。
・リンバ漏の排液の色は、淡黄色
・乳び漏の排液の色は、白色懸濁性(はくしょくけんだくせい)
・咽頭瘻(咽頭部縫合不全)があると白色泡沫状や膿性となる,
看護ケアのポイント
・吸引バックやドレーンが引っ張られてドレーンが抜けてしまうため、誤抜去に注意する
・バックは、ドレーンの位置から考えても首から下げられるような袋にドレーンバックを入れることで抜去をふせぐことができる。
・陰圧の強さは担当医に確認し、その陰圧が保持されているかを確認する
·縫合不全,ドレーン挿入部の創部離開,ドレーンの抜去などによって創内の
陰圧が保持されなくなるため排液がみれらなくなる。その場合は,血腫や二次感染がおきやすいのですぐに医師に報告する。
·ドレーン腔内の血液の凝固により,ドレーンが閉塞し排液困難になるため適宜観察えおこなう。
·排液が急に減少した、もしくは排液が少ない場合は,ドレーン閉塞を疑い創部の腫脹がないかどうかを確認する
·排液が急に減少した場合は,創部の腫脹がないかどうかを観察する。ドレーン閉塞の場合は排液はないが血腫となる場合があるので注意が必要である。
咽頭漏になった場合
・咽頭漏では,皮膚の発赤や腫脹,疼痛がある場合が多いので,創部皮膚の観
察は大切である.
·咽頭瘻形成時は皮屑を切開し,咽頭皮膚瘻の形態として局所の洗浄などで肉芽
増生を待つ。必要に応じて形成手術を検討する必要がある。
リンパ漏になった場合
・悪性腫瘍では広範囲のリンパ節の切除(リンパ郭清)を行うことも多い。通常でもリンパ液が術後4-5日は排液される。しかし、頚部の血管付近には太いリンパ管があり損傷し術後にリンパ液の漏れを起こした場合は1日500ml以上排液される。これがリンパ漏である
・ドレーンからの排液が淡黄色で術後数日過ぎても減少しない場合は,リンパ漏が考えられる。
·リンパ漏の状態が軽度の場合は,貯留液を十分吸引し、「ドレーンを抜去」し、穿刺吸引と「圧迫」することで症状の改善がみられる場合も多い。しかし、再手術(損傷されたリンパ管を閉鎖するリンパ痙閉鎖術)や薬液注入療法になる場合もある。
乳び漏(にゅうびろう)になった場合
·リンパ漏と同じく理由として悪性腫瘍でも広範囲のリンパ節の切除を行う。
・乳び漏とは、特に左側の頸部リンパ節を郭清すると、時に「胸管」という太いリンパ管の枝から大量の「白色」な液体が流出すること。
・乳び漏では,経口摂取せず絶飲食として、甲状腺周囲を圧迫固定する。改善しない場合は損傷されたリンパ管を閉鎖する手術を行う。