アル綿が使えない、アルコールアレルギーの方でも使える、アルコールの代わりとなる消毒液について書いていきます。
アルコール(エタノール)消毒
アルコール(お酒)を呑んで、顔や体が赤くになりやすかったり、お酒が酔いやすい人はアルコール消毒でも赤くになりやすいです。
これは、アレルギー反応によるものです。
アルコールにより炎症反応が起き、皮膚が赤くなるのです。
そのため、体内でもアルコールが分解できないため少し飲んだだけで酔ってしまいます。
アルコールが消毒に使われる理由
そもそもなぜアルコールが注射の際によく使われるのかというと4つの理由があります!
- 細菌類の細胞膜から脂質を溶かし出し、菌力を低下させるため。
- タンパク質を変性させ菌の機能を失わせるため。
- アルコールは揮発性が高いため速乾性がありすぐに注射できる(ポピヨードの消毒効果高めるには乾燥が必要)
- 皮膚に対して刺激性が弱いわりには、殺菌作用が強い
消毒の仕方
- 注射する部位を中心に外側へ円を描くように拭きます。
- 一度使った消毒綿は、同部位でも二度と使用せず捨てる。
- 消毒液が完全に乾いてから注射すること。(痛くないし、消毒効果も高い)
万能壷(アルコール綿などいれるビンや缶のこと)
万能壷にあらかじめ消毒液を綿カットに浸して作っておく場合は、時間の経過による消毒液の濃度の低下や汚い手で触れることで汚染しやすいです。24時間以内には破棄するようにします。そのため個別に包装されているものが推奨されています。
コストを考えるとやはり万能壷が経済的です。
アルコール綿を使用できない場合は3つ
しかし、消毒をアルコールが弱い方ができないということではないです。
アルコール以外に消毒液はいくつかあるからです。
もし、注射・採血時にアル綿が使えない方がいれば「アル禁」などと注意書きして間違ってアル綿を使わないようにします。
アルコール以外に主に使われるのは3種類です。
- 10%のポビドンヨード液
- 0.1%〜0.2%クロルヘキシジン液
- 0.02~0.1%塩化ベンザルコニウム
*注射・採血時の皮膚への消毒
10%のポビドンヨード液(イソジン)
ポリビニルピロリドンとヨウ素を結合させた消毒液です。殺菌力が強いですが皮膚刺激性や組織障害性は弱いです。
グラム陽性・陰性菌,結核菌,真菌,その他一部のウイルスや原虫にも有効です。
手術や検査処置などではポビドンヨードが望ましいです。
しかし、注射前の消毒では乾燥時間が長いことや色素が付くなど皮膚および服などにもつきおちにくいため他の消毒剤で代用することが多いです。ですが、日本ではイソジン消毒が人気で手術やカテ挿入なでではよく使われています。創口の消毒,イソジンガーグルなど口腔内消毒などにも使用されています。
0.1%〜0.2%クロルヘキシジン液
現在最も普及している強力な消毒薬です。海外ではイソジンよりクロルヘキシジンが効果の高く使いやすい消毒液として使われることが多いです。グラム陽性菌・陰性菌,双方に有効効果あります。しかし、緑膿菌やプロテウスなどは効果は低いです。金属を腐食ので器具の消毒、カテーテルケアにはヒビテン,ヒビスクラブがよく使われています。
商品名がいろいろあるので聞いたものがあるでしょう。
消毒剤の種類はいくつかあり、濃度もさまざまで原液もあり禁忌事項もあるため注意して使用することが必要です。
しかし、大抵は希釈済みのものを病院で使われているかと思います。逆に希釈済みではない消毒剤の使用は薄めるにしろ炎症のおそれが高くなるのでおすすめしませんし、使っている病院もほぼないでしょう。原液を在庫として置いとくだけで間違いの元となるので置かないことにしていおいた方がよいでしょう。
クロルヘキシジン液は石けんと併用すると殺菌力低下し、生食で希釈すると殺菌効果はなくなりますので注意!
0.1%〜0.2%クロルヘキシジン液単包2枚入り
クロルヘキシジングルコン酸塩含む2枚の消毒綿が包装されているものです。
- オオサキCHG消毒綿0.2%
60包800円、100包1280円 - 白十字ワンショットプラスヘキシジン0.2%
60包800円 - ハクゾウG綿0.1%
60包900円、200包2600円
アルコール綿とのコスト比較
・アルウエッティone2エタノール
60包650円、200包1500円
・アルウエッティBox
100枚入 330円、200枚入 450円
比較
オオサキCHG消毒綿0.2% 100包1280円だと1包12.8円
アルウエッティone2エタノール200包1500円だと1包7.5円
12.8円➗7.5円=1.7倍の価格です。
つまり、アル綿の方が1.7倍安いです。
やはり、クロルヘキシジンの消毒綿の方がコストは高いです。
クロルヘキシジンの希釈済み製品は?
- ステリクロンRとステリクロンW(0.02%,0.05%,0.1%,0.5%)
- ヘキザック(0.02%,0.05%,0.1%,0.5%)
- マスキン水(0.02%,0.05%,0.1%,0.5%)
- グルコジンW水、グルコジンR水(0.02%(Wのみ),0.05%,0.1%,0.5%)
- ヒビディール(0.05%)2015年販売中止
→代替となる消毒液:商品名「スワブスティックヘキシジン」
(0.05%クロルヘキシジングルコン酸塩製剤綿棒付)
リバテープ製薬株式会社
濃度別消毒の使用範囲
クロルヘキシジン
0.02% 外陰・外性器の皮膚、結膜嚢
0.05% 創傷部位
0.1~0.5% 手指、皮膚、医療用器材、環境
・膀胱・膣・耳へは禁忌
ベンザルコニウム塩化物
0.01% 感染皮膚面
0.01~0.025% 手術部位の粘膜、創傷部位
0.01~0.05% 粘膜嚢
0.02~0.05% 膣
0.1% 手指
0.1~0.5% 医療用器材、環境
塩化ベンゼトニウム
0.01% 感染皮膚面
0.01~0.025% 手術部位の粘膜、創傷部位
0.02% 粘膜嚢
0.03% 膣
0.1% 手指
0.1~0.5% 医療用基材、環境
0.02~0.1%塩化ベンザルコニウム
注射や採血の消毒はそこまで強い消毒を必要としないため「ベンザルニコウム塩化物、塩化ベンゼトニウム」の消毒も使うこともあります。
- 0.02~0.1%塩化ベンザルコニウム(ザルコニン®0.025%)
- 塩化ベンゼトニウム(ベゼトン0.02%)
*塩化ベンザルコニウム(ザルコニン)と塩化ベンゼトニウム(ベゼトンなど)は類似物質
*粘膜も消毒に0.02〜0.025%はつかってよいが0.2~1%は禁忌なので注意!
塩化ベンザルコニウム(四級アンモニウム塩)の殺菌の原理
殺菌の原理は、解明されていませんが…
・タンパク質を変性
・細胞膜にある酵素を不活性化
・一般的な細菌(大腸菌や黄色ブドウ球菌(MRSA含む)など)について殺菌効果がある
・結核菌等の抗酸菌やほとんどのウイルス、細菌胞子(芽胞)や真菌には殺菌効果ないので注意
注意点は?使用禁忌は?
「ベンザルニコウム塩化物、塩化ベンゼトニウム」は、膣洗浄に使われたりと汎用性は高いです。
使用禁忌などはとくになく、濃度に気をつけて使用するば粘膜である膣などにも使えることが大きなメリットです。
クロルヘキシジンは禁忌が多いですが、注意点を守れば安全な消毒ですので、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムのほうがすぐれているということではありません。
画像:http://www.kenei-pharm.com/
*不活化:菌を死滅させること