スワンガンツカテーテル挿入の目的
・心拍出量や右心房、右心室、肺動脈圧の測定による心機能や心不全の程度を評価する
・心内圧・心拍出量CO・混合静脈血酸素飽和度(SVO2)の測定を行うため
・循環動態・心機能の異常の詳細な把握し輸液管理や治療方法を判断するため
*スワンガンツカテーテルを挿入することで予後がよくなるというエビデンスはなく指標や評価で用いることが多い。そのため、侵襲があるため安易に使用されてはならない。
適応
・心不全治療時の心機能評価が心エコーなどで十分に行えないとき
・心臓カテーテル検査として行う場合
合併症のおそれのある疾患
・穿刺操作の合併症…隣接する動脈の損傷と出血、気胸
・挿入操作での合併症…不整脈や肺動脈損傷
・長期留置の合併症…血小板現象、肺塞栓、敗血症(感染による)
スワンガンツカテーテル挿入の準備
* エドワーズライフサイエンス株式会社
・カテーテルをヘパリン生食で満たす
・バルーンが膨らむか確認する
・イントロデューサーカテーテルを通す
体位
頭位を下げ、血管を怒張させる
頭低位(10~20度のトレンデンブルグ位)
しかし、カテーテル挿入時は逆に頭位をあげる
挿入部位と挿入経路と方法
・内頸動脈が多い
・ガイドワイヤーを用いるセルジンガー式穿刺方法
1、内頚静脈
2、大腿静脈
3、鎖骨下静脈
4、上腕静脈
のいずれかに留置し、カテーテルを挿入する方法
スワンガンツカテーテル挿入の手順
①消毒
②ドレープ
③局麻
④試験穿刺23G針
⑤穿刺針にて穿刺を行い、ガイドワイヤーを挿入
⑥メスにて穿刺部を切開しガイドワイヤーに沿ってシースを挿入(逆血確認)
⑦医師がシースにカテーテルを挿入。(肺動脈まで進める)
⑧注入孔は右心房に位置させる。
⑨外回り看護師は先端ルーメンを受け取り流圧計にラインを接続する。
・モニターの0点
・モニター確認
*カテーテルが右心室通過時に刺激により心室性期外収縮などの不整脈を起こすことがある
⑩バルンを膨らませモニターを観察しながらカテーテルを進める
肺動脈楔入圧を確認しバルンのエアーを抜く
⑪穿刺部をナートし穿刺部をガーゼで拭き
サージットにて保護し、固定用テープにて固定をする
⑫・レントゲンにて挿入部位の確認
・コネクターをモニターに接続しCOの測定開始
・先端孔ルーメンから静脈血を採取して血液データを確認し、混合静脈血酸素飽和度SVO2の開始
カテーテル挿入のポイント
・経路:上大静脈→右心房→右心室→肺動脈
・先端孔を肺動脈圧測定用血圧トランスデューサと接続することで,右心房圧波形,右心室圧波形,肺動脈圧波形,肺動脈楔入圧波形の4つの圧波系を観察し、その波形でどこに先端があるか確認しながらカテーテルを進める。
・肺動脈カテーテルを肺動脈に進める際,カテーテル先端のバルーンを空気で膨らませたあと,血流に乗って進める。このときは頭低位を解除する。
・カテーテルが右心房と上下大静脈との結合部付近まで挿入された時の挿入部位からカテーテル先端までの距離は、典型的な成人の場合、右前肘窩から約40cm、左前肘窩から約50cm、頸静脈から15~20cm、鎖骨下静脈から10~15cm、大腿静脈から約30cm
名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授 松田直之
1、肺動脈圧 PAP
正常値:15~30mmHg(収縮期)
2、肺動脈楔入圧 PCWP
正常値:2~12mmHg(平均圧)
3、心拍出量(CO)
正常値:4~8L/min
4、混合静脈血酸素飽和度(SVO2)
正常値:70~80%
混合静脈血酸素飽和度は肺動脈内の血液の酸素飽和度です。全身の酸素飽和度をさす。
5、右室圧 RVP
収縮期:15~25拡張期:0~8
6、右房圧 RAP
-1~7平均圧:4
7、中心静脈圧 CVP
平均圧:2~8
抜去時期
心機能の評価後は合併症予防のため1週間程度で抜去する
看護のポイント
・実施前には、カテーテル挿入の必要性や方法、注意点などを医師とともに説明し、細かなところ不安感をとりのぞくことは看護師が説明し、患者の不安軽減に努める
・バイタルサイン、自覚症状の有無を観察する。
・清潔操作で介助する
・処置中、患者は局麻で意識がある場合は患者の看護も忘れない。
(穿刺時や麻酔時の痛みは不安、緊張などで血圧低下、徐脈、悪心嘔吐,振戦を起こすことがあるのでモニターや患者の様子を観察する)
・カテーテル固定に関しては、カテーテルの浸入の長さや固定位置を確認する。
・挿入部位は直接、牽引圧がかかったり動かないようにテープでしっかり固定する。
・挿入部位の発赤・腫脹・浸出液などの感染の有無、出血、血腫形成の有無を観察し、消毒を行い、異変がある場合は医師に報告する
・数日間の留置はとくに、感染に注意し、発熱時・感染が疑われる場合は早めに抜去する必要がある
・圧測定ラインに、加圧バッグを経由したヘパリンが入った生食の注入が、継続されないと血栓ができカテーテルが閉塞してしまうおそれがあるので定期的に確認するようにする
・ルートが多いため接続がしっかりされいているか適時確認する。
ルート整理や、テープ固定をしっかりする
・自己抜去のリスクがある場合抑制を考える
・モニターの波形が正しく出ているかを適時確認
スワンガンツカテーテル抜去の手順
必要物品
抜糸セット、ドレープ、滅菌ガーゼ、消毒、袋、シルキーテックス
①患者へ説明
②バルーンが閉じていることを確認
③縫合部を抜糸
④スワンガンツカテーテルを抜去
⑤抜去部は手で数分圧迫止血しシルキーテックスとガーゼにて圧迫固定をする
以下を参考に作成しました。
参考資料
*「日本臨床麻酔学会誌」
スワンガンツカテーテルの功罪
*名古屋大学大学院医学系研究科
救急・集中治療医学分野
教授 松田直之
*スワンガンツ・サーモダイリューション・カテーテル(ヘパリンコーティング)
エドワーズライフサイエンス株式会社